Samsung SDIは2月23日、電気自動車(EV)向け電池中心だった事業構成を見直し、エネルギー貯蔵システム(ESS)を成長の中核に据える方針を示した。EV需要の短期回復は見込みにくいと判断し、2026年のESS売上高を前年比で約50%増やすとともに、下半期の四半期黒字化を目指す。
同社は、事業構造の転換と並行して財務体質の立て直しも進める。2月19日には、投資財源の確保と財務構造の改善に向け、保有するSamsung Display持分などの売却を推進すると開示した。
2025年10-12月期の売上高は3兆8587億ウォン、営業損失は2992億ウォンだった。売上高は前四半期比で26.4%増えたが、営業赤字は続いた。通期では売上高が13兆2667億ウォン、営業損失が1兆7224億ウォンとなった。環境政策の変化に加え、米国の戦略顧客でのEV販売減速や小型電池需要の回復遅れが響いた。
一方、ESS向け電池は10-12月期に過去最高の四半期売上を記録し、赤字幅も前四半期の半分程度まで縮小した。米国の先端製造生産税額控除(AMPC)の計上増に加え、EV電池の販売数量減少に伴う補償が寄与したという。
同社は、中国勢を除けば角形電池を手掛ける数少ないメーカーとして、三元系(NCA)ベースの「SBB 1.7」と、リン酸鉄リチウム(LFP)ベースの「SBB 2.0」を展開し、製品構成の多様化を進めている。
10-12月期の決算説明会では、自動車メーカー(OEM)が燃費規制の緩和や補助金廃止などの政策変更を受けて電動化戦略を調整しており、EV電池需要の短期的な回復は容易ではないとの見方を示した。
そのうえで同社は、今回の方針を単なる防衛策ではなく、中長期の成長機会を見据えた戦略転換と位置付ける。三元系とLFPの両ポートフォリオを持ち、米国内の生産能力も確保したうえで、人工知能(AI)データセンターの拡大に伴う電力需要増を取り込む構えだ。
Samsung SDIは、世界のEV電池市場が2026年に前年比約16%成長する一方、中国を除く市場の伸びは約6%にとどまるとみている。小型電池と電子材料は業績下支えの事業と位置付け直し、ESSで成長と収益を確保する体制へ移行する。
ESS需要については、AIデータセンター投資の拡大が追い風になるとみる。無停電電源装置(UPS)やバッテリーバックアップユニット(BBU)向け需要は、前四半期時点の想定を上回る中長期需要になるとの見通しを示した。
また、米国のインフレ抑制法(IRA)や関税政策の変化を受け、中国以外の企業にとっては米国現地生産の機会が広がっていると説明した。
同社は米国で、既存のEV向けラインをESS向けへ転換している。チョ・ヨンフィESS電池チーム長は、2025年10-12月期から米国での生産能力転換を進めており、2026年のESS売上高は前年比で50%近く増える見通しだと明らかにした。
韓国生産分は米国向け輸出比率が高く、関税負担によって採算が低下しやすい。ただ、米国での現地生産に切り替えることで、AMPCの効果に加えて関税負担の軽減も見込め、ESS事業全体の収益性は大きく改善すると同社はみている。
さらに、2026年10-12月期から米国のLFP新ラインが稼働すれば、関税負担のある韓国からの輸出数量は徐々に減少する見通しだ。新ライン立ち上げ時の固定費負担の緩和も重なり、収益改善は一段と鮮明になるとしている。
チョ氏は、現地企業がEVラインを活用してESS向け生産能力を増やそうとしても、製品認証やサプライチェーン構築には時間がかかると指摘した。とくにLFP正極材や角形フォームファクターでは技術面のハードルが高く、増産ペースは限られるため、短期的に供給過剰へ陥る可能性は大きくないとの見方を示した。
電子材料事業は、半導体需要の底堅さを背景に堅調な成長が続く見通しだ。パク・ジョンソン戦略マーケティング担当副社長は、AIインフラやデータセンター建設の増加により、プロ向け電動工具の販売も伸びていると説明した。
また、タブレス製品の需要はBBUやハイブリッドEV向けにも広がっており、2026年には円筒形電池に占めるタブレス製品の売上比率が10%以上上昇する見込みだとした。
業績改善のタイミングについては、下半期から鮮明になるとの見方を示した。オ・ジェギュン経営支援担当副社長は、1-3月期の季節要因による閑散期を除けば四半期ごとに改善が進み、下半期には四半期ベースでの黒字転換も可能だと述べた。
Samsung SDIにとって、2026年は事業立て直しの成否を左右する年となる。チェ・ジュソン社長は年頭あいさつで、2026年を再飛躍の出発点にしなければならないとして、危機感を持って取り組むよう社員に呼びかけた。
財務面では、Samsung Display持分の売却が資金確保の柱となる。ハナ証券によると、Samsung SDIが保有するSamsung Display持分15.2%の簿価は約10兆1000億ウォン。Samsung Displayの今後2年間の年平均営業利益予想を基準に、中国パネル大手BOEの株価収益率(PER)を当てはめると、Samsung Displayの適正価値は約65兆~70兆ウォンになるという。
この持分を簿価比で1.1倍前後で現金化できれば、最大で約11兆ウォンの資金流入が可能になるとの分析もある。
資金流入が実現すれば、財務指標の改善余地も大きい。2025年10-12月期末時点の負債比率は79.3%だが、約11兆ウォンの資金が入れば50%台半ばまで低下する見通しだ。流動比率も0.89倍から約2.0倍に改善可能としている。
フリーキャッシュフロー(FCF)についても、約マイナス5000億ウォンから、プラス10兆ウォン水準まで改善し得るとみられている。
IBK投資証券は、Samsung SDIの年間投資額(CAPEX)が毎年3兆ウォン規模で、2026年と2027年の予定額が計5兆9000億ウォンである点を踏まえると、少なくとも4兆4000億ウォン規模の持分売却が進むと分析した。
未来アセット証券も、Samsung SDIの目標株価を50万ウォンから60万ウォンに引き上げた。Tesla向け事業の開始に加え、Samsung Display持分売却による財務構造の改善を織り込めば、世界の上位競合に比べて割安とみなされる理由は薄れると評価した。
業界関係者は、資金確保と事業再編を同時に進める取り組みは、中長期の競争力確保の観点から前向きだと指摘する。そのうえで、今後はESSの収益性をどこまで引き上げられるかが最大の焦点になるとみている。