IBK企業銀行で1カ月超に及んだ労使対立がひとまず収束し、チャン・ミニョン氏が20日、第28代総裁に就任した。トップ不在の事態は解消したものの、未払い手当の精算や総額人件費制度への対応など内部課題はなお残る。低成長局面で政策金融機関としての役割をどう強化するかも、新体制の大きな焦点となる。
企業銀行によると、チャン氏は20日、本店で就任式に臨み、総裁としての業務を正式に開始した。
チャン氏は1月23日に任命されたが、労組の出勤阻止で22日間にわたり本店に入れなかった。その後、旧正月連休前の2月13日に賃金交渉案で最終合意に達し、対立はひとまず収束した。
対立の最大の争点は、未払いの代休補償や特別成果給など、報酬制度を巡る問題だった。労組は全職員分の未払い代休補償の全額現金支給と特別成果給の支給を求め、強硬姿勢を続けていた。
労使合意書には、未払い手当問題の正常化に向けた原則的な合意が盛り込まれた。労組は未払い手当の規模を約1500億ウォンと推計してきた一方、暫定合意額は約830億ウォンとされる。
ただ、これは最終決定ではない。今後、企業銀行と金融委員会の協議を経て、経営予算審議会で確定される見通しだ。
このため、労使の認識の隔たりが完全に埋まったわけではないとの見方もある。今回の合意は、問題を抜本的に解決したというより、対立をひとまず収めた段階にとどまるという評価だ。
労使は合意文で、このほか従業員持株の拡大、実質補償の拡充、経営評価制度の改善、業務量削減の推進でも一致した。目先の対立を収める一方で、中長期の制度改善も並行して進める考えだ。
こうした中、就任式では労組側も公開の場でメッセージを送った。労組委員長のリュ・ジャンヒ氏は、チャン氏に対し「同志」になってほしいと求めた。
リュ氏は「企業銀行のリーダーは対外的にはCEOだが、内部では労働者を守り、必要な時には共に闘う存在でなければならない」と述べた上で、「働いた分、苦労した分が適正かつ適時に補償される公正な職場をつくってほしい」と訴えた。
さらに「実質的な使用者が政府であることは理解しているが、それによって経営陣の責任がなくなるわけではない」とし、「企業銀行の特殊性が認められるまで闘争を続ける」と強調した。
これに対しチャン氏は、「労組の厳しい批判も真摯な助言も、開かれた姿勢で受け止める」と表明。「労組と協力し、賃金と福利厚生の改善に最善を尽くす」と述べた。
一方でチャン氏は、政策金融機関としての役割強化も前面に打ち出した。就任あいさつでは、2030年までに300兆ウォンを投じる「IBK型生産的金融プロジェクト」を本格始動すると明らかにした。AI、半導体、エネルギーなど将来の新産業分野への資金供給を拡大する方針だ。
創業初期から成長・成熟期まで、企業の成長段階に応じた金融支援も拡充する。技術力と成長性を反映した融資審査体系の見直しにも着手する。
資本市場投資を拡大し、グループとしてのファンド運用を強化する考えも示した。
小規模事業者向け支援も広げる。75兆ウォン規模の支援策を進め、低金利の借り換え融資で金利負担を軽減するほか、債務調整と経営コンサルティングを組み合わせた総合支援体制を構築するという。
チャン氏はさらに、企業銀行をAIを軸とする企業へ転換する構想も示した。膨大な企業金融データとAIを組み合わせ、分析、審査、健全性管理を高度化し、高度に個別化したサービスの提供を目指す。組織文化についても、AI親和型へ全面的に見直す考えを打ち出した。
同時に、内部統制と消費者保護の強化も強調した。「金融機関は一度の事故でも顧客の信頼を完全に失いかねない」と述べ、信頼金融の確立を約束した。昨年、大規模な金融事故を経験しただけに、内部統制体制の立て直しは喫緊の課題とみられている。
企業銀行が政策金融機関である一方、上場企業でもあるという二面性にも言及した。チャン氏は「公共性と商業性のバランスの中で成長を続ける」とした上で、「不要な報告を減らし、権限を現場に委ねて本質に集中する」と述べた。
新体制の課題は大きく2つある。1つは、公的機関の総額人件費制度という制約の下で、職員の補償問題を解決する内部課題。もう1つは、低成長と産業転換が進む中で、政策金融機関としての存在意義を示す外部課題だ。
特に内部課題については、労使合意でひとまず区切りはついたものの、総額人件費の例外適用や未払い手当の精算が実現するかどうかは、今後の協議に左右される。
金融業界関係者は「公共性と商業性の両立が求められる企業銀行の特殊性を踏まえると、チャン・ミニョン体制が労使の信頼回復と政策金融のリーダーシップ確立という2つの課題を同時に解けるかが注目される」と話した。