有力テック企業の間で、新たな人工知能(AI)モデルの投入が相次いでいる。足元では米中の主要企業が次世代モデルの公開や既存モデルの刷新を打ち出しており、とりわけ中国勢の動きが目立つ。
Alibabaは新たなAIモデル「Qwen 3.5」を公開した。複雑な作業を自律的に実行できるよう設計したとし、複数のベンチマークで性能とコストの両面から米国の主要競合モデルを上回ったと説明している。
ByteDanceはAIベースの動画生成モデル「Seedance 2.0」を投入した。マルチシーン処理や音声・セリフの同期、多言語対応などを特徴として打ち出している。著作権侵害を巡る論争が強まるなか、同社は保護措置も強化する方針だ。
DeepSeekも次世代の主力AIモデル「V4」を近く披露するとみられる。The Informationによると、社内ベンチマークに基づくテストでは、V4がコーディング性能でAnthropicのClaudeやOpenAIのGPTシリーズなど既存モデルを上回ったという。
米国勢も既存モデルの改良で応戦している。Anthropicは新モデル「Sonnet 4.6」を公開し、コーディング性能と文脈理解能力を強化したとした。OpenAIはCodexの軽量版「GPT-5.3-Codex-Spark」を公開。Googleも「Gemini 3.1 Pro」を近く発表する予定だ。
エンタープライズAIを手がけるCohereは、多言語対応モデル「Tiny Aya」を発表した。オープンウェイト方式で提供し、70超の言語に対応する。インターネット接続がなくても、ノートPCなどのローカル環境で動作できるとしている。
OpenAIは韓国の大手ITサービス企業との提携を通じ、エンタープライズ市場の開拓を急いでいる。LG CNSはOpenAIと「リセラーパートナー」および「エンタープライズAIサービス実装パートナー」の契約を締結した。法人向け「ChatGPT Enterprise」の導入から活用、運用までを一括して支援する。
Samsung SDSもOpenAIとリセラーパートナー契約を結び、「ChatGPT Enterprise」を軸とする企業向けAI事業を本格化した。
AIを自社開発する企業や活用を進める企業の動きも続いている。個人向けAIエージェント「OpenClou」を開発したオーストリアの開発者、ピーター・シュタインバーガー氏はOpenAIに加わった。同氏はブログで、「OpenClouを大企業に育てることもできたが、それには関心がない。目指すのは大きな会社を作ることではなく、世界を変えることだ。OpenAIと組むことが、この技術を最も速く広く届ける道だ」と述べた。
GoogleはGeminiアプリにAIベースの音楽生成機能を追加する。Metaが買収したAIエージェントサービス「Manus」は、Telegram向けに個人AIエージェントを提供し、WhatsApp、LINE、Slackなど主要メッセンジャーとの統合も計画している。
FigmaはAnthropicと連携し、AI生成コードをデザインに変換する「Code to Canvas」機能を公開した。WordPress.comも、自然言語の指示だけでレイアウト変更やスタイル調整、画像生成まで行えるAIアシスタントを公開した。
中国のBaiduは、AIエージェント「OpenClou」を検索アプリに搭載し、7億人のユーザーに直接提供する計画だ。
資金調達や買収の動きも活発だ。フランスのAIスタートアップMistral AIは、AIアプリの配布やインフラ管理の簡素化を支援するパリ拠点のスタートアップ「Koyeb」を買収した。Koyebは2020年に設立され、サーバーレス環境でAIアプリケーションを容易に展開できるプラットフォームを提供している。Mistral AIのアルトゥール・メンシュCEOは、現在IT部門で使われているソフトウェアの50%超がAIに置き換わるとの見方を示した。
ServiceNowは、イスラエルのビッグデータスタートアップ「Pyramid Analytics」を買収し、AIベースのビジネスインテリジェンス(BI)市場の攻略に乗り出した。
検索スタートアップのPerplexityは広告事業を中止した。競合各社が収益化策として広告導入を進める流れとは逆の判断となる。同社は、広告がチャットボットの回答に影響しないとしつつも、「広告があるとユーザーはあらゆる情報を疑い始める」として、広告モデルに実益は乏しいと判断した。
Airbnbは、自社開発のAIエージェントが北米の顧客サポート業務の30%を処理していると明らかにし、今後はこれをグローバル市場に拡大する計画を示した。
インドでも成長事例が出ている。バイブコーディングプラットフォームのEmergentは、創業から8カ月で年換算の経常収益(ARR)が1億ドル(約150億円)を突破した。AI企業Sarvamは、Nokiaのフィーチャーフォンや自動車、スマートグラス向けのAIモデルを公開し、大規模言語モデル(LLM)と音声・ビジョンAIモデルも投入した。
AI推論分野のスタートアップへの関心も高い。AI推論インフラを開発するModal Labsは、企業価値25億ドル(約3750億円)規模での新規資金調達に向けて交渉を進めている。このラウンドが成立すれば、企業価値は5カ月前の11億ドル(約1650億円)から2倍超に膨らむことになる。
スタンフォード大学のフェイフェイ・リー教授が率いるAIスタートアップWorld Labsは、Autodeskから2億ドル(約300億円)の出資を受けた。両社はWorld LabsのAIモデルとAutodeskのCADソフトを組み合わせ、建築、エンジニアリング、エンターテインメント分野での新たな活用事例の開発を進める。
AppleはAIウェアラブル市場をにらみ、新製品3種を開発しているという。AIスマートグラス、AI AirPodsに加え、AirTagサイズのペンダント型でカメラを備え、衣服に装着できるAIピンも開発中とされる。
LulumedicはUpstageと、医療マイデータと医療現場に適用可能な大規模言語モデル(LLM)ベースのサービス事業に向けた業務提携の覚書を締結した。
セキュリティ市場では大手主導の買収が続く。Palo Alto Networksは、企業向けファイルセキュリティを強みとするスタートアップKoi Securityを4億ドル(約600億円)で買収した。
Check Pointも最近、スタートアップ3社を相次いで買収した。買収総額は1億5000万ドル(約225億円)。内訳は、企業のサイバーセキュリティデータを分析してリスク要因を特定するデータレイク基盤を手がけるCyclops、AIエージェント向けのセキュリティガードレールを提供するCyata Security、MSP向けセキュリティプラットフォームを開発するRotateだ。