Grafana Labsが新たな資金調達を進めている。シンガポール政府投資公社(GIC)がラウンドを主導するとみられ、調達が完了すれば企業価値は66億ドル(約9900億円)から最大90億ドル(約1兆3500億円)に高まる見通しだ。
評価額は半年前と比べて36%上昇する計算となる。背景には、主力事業の成長を示す年間経常収益(ARR)の拡大がある。2024年8月時点で2億5000万ドル(約375億円)だったARRは、2025年9月に4億ドル(約600億円)を超えた。
Grafana Labsは、オープンソースの「Grafana」を基盤とするオブザーバビリティプラットフォームを商用提供している。Grafanaは、システムやアプリケーションから収集した性能、状態、利用状況などのテレメトリデータを集約し、ダッシュボードで可視化するツールだ。例えばECサイトでは、サービス性能の推移やダウンタイムの兆候を把握する用途などに使われる。
同社プラットフォームの特徴は、オープンソース版GrafanaにAI機能「Sift Investigation」を組み込んでいる点にある。Sift InvestigationはKubernetesクラスターのテレメトリを自動分析し、潜在的な技術課題の特定を支援する。チャットボット機能も備え、新規ユーザーが競合製品で行っていた分析作業を説明すると、同様のワークフローを同社プラットフォーム上で再現する方法を案内するという。
プラットフォームには、アプリケーションに大量の仮想トラフィックを発生させて負荷試験を行うオープンソースツール「k6」も含まれる。開発者はこれにより、新たに展開したワークロードがアクセス急増時にも想定通りに動作するかを検証できる。
クラウドネイティブアーキテクチャの普及に伴い、監視の複雑さは増している。マイクロサービスやコンテナ、サーバレス環境では、従来型の監視ツールだけで障害原因を追跡するのは難しい。オブザーバビリティプラットフォームは、メトリクス、ログ、トレースを統合してシステム内部の状態把握を支援する技術として導入が広がっている。
競争環境も変化している。2022年にはFrancisco PartnersとTPGが、Grafana Labsの競合であるNew Relicを約65億ドル(約9750億円)で買収し、非公開化した。Datadog、Splunk、Elasticも同分野の主要プレーヤーだ。DatadogはSaaS型の統合監視基盤として成長し、Ciscoは2024年にSplunkを280億ドル(約4兆2000億円)で買収した。Elasticもログ分析と検索エンジンを軸に、オブザーバビリティ領域へ事業を広げている。
こうした中、Grafana Labsはオープンソースコミュニティを差別化要因に位置付ける。Grafanaプロジェクトは活発なコミュニティと幅広いユーザー基盤を持つとされ、オープンソースツールに慣れた開発者を商用プラットフォームへ取り込める点が強みとみられている。こうした成長モデルは、Red HatのLinuxやHashiCorpのTerraformにも通じる。