電気自動車の普及に伴い、自動車の車内インターフェースはミニマルでデジタル寄りの設計が主流になってきた。しかし、安全規制の強化と消費者の不満の高まりを受け、業界では物理ボタンを見直す動きが広がっている。Business Insiderが14日、報じた。
これまで車内では、空調ノブが姿を消し、ドアハンドルは車体に埋め込まれ、音量調整も触覚フィードバック付きのスライダーに置き換わるなど、タッチ操作への集約が進んできた。だが、こうした設計は使い勝手や安全面で課題も指摘されている。
Audiは2027年発売予定の「e-tron」で、より触感を重視したインテリアを採用する方針を示した。Ferrariも、ジョニー・アイブと協業した初の電気自動車で物理スイッチを積極的に取り入れた。
Teslaもフラッシュ(フラッシュマウント)式ドアハンドルの再設計を進めている。Volkswagenのデザイン責任者、アンドレアス・ミント氏は「車は電話ではない。二度と同じ過ちはしない」と述べた。
タッチ操作偏重の流れを広げたのはTeslaだった。Model Sは17インチの大型タッチスクリーンを中心に設計され、先進的なイメージの訴求とコスト削減の両面で効果を上げた。その後、Volkswagen ID.4やRivian、Ford Mustang Mach-Eなども同様の方向を追った。
一方で、画面操作だけでは運転中の直感的な操作に向かないとの指摘が強まった。中国では安全面を理由に、隠しドアハンドルが禁止された。米国の高速道路交通安全局(NHTSA)も、電子式ドア機構に関する苦情を調査している。
欧州でも、タッチスクリーンを多用した車両には最高安全評価を与えない方針が示された。車をスマートフォンのように機能させるという発想自体はなお有効だが、安全性と操作性の観点からは物理ボタンの必要性が改めて高まっている。
自動車のデジタル化そのものが後戻りするわけではない。ただ、タッチスクリーン一辺倒の設計は、実用性や安全性との両立が難しいことも明らかになってきた。業界は今、デジタル技術とアナログな操作感の最適なバランスを探っている。
物理ボタンが再び注目される理由は、単なる懐古趣味ではない。直感的で安全な運転体験を支える要素として、その価値が見直されているためだ。