写真=Dassault SystemesでENOVIA担当バイスプレジデントを務めるヤニック・オドゥアール氏

Dassault Systemesは、年次のSOLIDWORKSカンファレンス「3DEXPERIENCE World 2026」(現地時間2月1〜4日)で、LLMベースの汎用チャットボットではなく、工業分野での実務利用を見据えた生成AIを前面に打ち出した。新たな仮想コンパニオン「レオ」と「マリー」を公開するとともに、その実装を支える基盤としてデータガバナンスの重要性を訴えた。

今回披露したレオとマリーは、3Dモデリングにとどまらず、高度なエンジニアリング業務まで支援する位置付けだ。

レオは構造、機械、シミュレーション、製造といった領域で、物理ベースの解析を担うエンジニアを支援する。一方のマリーは、設計プロセスの中でも材料など、より科学的な領域を担当する。

同社は、こうした仮想コンパニオンを実務で機能させるには、企業側でエンジニアリングデータのガバナンスを整備しておく必要があると強調した。3DEXPERIENCE World 2026でも、データガバナンスは工業向けAIを支える中核テーマの1つとして扱われた。

同社によれば、データガバナンスの要諦は、データ分類や共有ポリシーをAI活用に合わせて最適化することにある。一見すると単純に見えるが、実際の導入は容易ではない。特に、組織内のコラボレーションが十分に根付いていない企業では、障壁が大きくなりやすいという。

会場では、ENOVIA担当バイスプレジデントのヤニック・オドゥアール氏が、ガバナンスの在り方を見直す必要性を指摘し、3つのキーワードを示した。

同氏は、ガバナンスの観点からENOVIAが提供するユーザー体験に焦点を当てて説明した。

ENOVIAは製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションで、製品開発全体を通じたコラボレーション、データ管理、ナレッジ共有を支援する。クラウドベースで、開発、製造、サービスの各工程で生じるデータの接続と統合を担う。

オドゥアール氏が示したキーワードは、「インビジブル」「フォワード」「スーパーチャージド」の3つだ。単にAI機能を追加するのではなく、現場の実行力を高めるガバナンスが狙いだという。

同氏によると、Dassault Systemesが昨年投入した仮想コンパニオン「Aura」は、タスク管理および会議管理の中核を担う。例えば、設計者がAuraの提示した優先タスクを選ぶと、関連する設計環境が自動で立ち上がる。

作業完了後は、Auraが承認、リリース、トレーサビリティー対応を自動化し、利用者の業務フローを妨げない。会議中には会話内容をリアルタイムで要約・構造化し、タスクを割り当てたうえでバーチャルツインに接続し、会議後の対応まで自動化できるよう支援する。

ナレッジ管理では、文書内の情報を自然言語で検索し、要約や出典追跡まで支援する「クロスドキュメント・インサイト」を提供する。社外プラットフォーム上の文書も分析対象に含めることができ、既存システムを移行せずに活用できるとしている。

「フォワード」の観点でも、ENOVIAのガバナンス戦略を打ち出した。製品リリース、変更管理、部材調達にまたがる業務を対象に、設計者、サプライチェーン担当者、プロジェクトリーダーなど幅広い職種向けに、AIベースの業務フローを提示するという。

オドゥアール氏は「リリース工程では設計者に必要要件を案内し、変更管理では影響分析と業界のベストプラクティスを反映した提案を示すことで、業務上の衝突を最小限に抑える」と説明した。

最後の軸となる「スーパーチャージド・ガバナンス」では、管理者だけでは処理しきれない水準の判断をAIが補完する。プロジェクトリーダーはAuraを通じて、日程、リスク、チームの状態に関するデータを統合的に把握し、人員の再配置にも反映できるとしている。

規制対応では、AIが文書を要件に落とし込み、設計情報と連携して影響範囲を把握することで、「設計ベースのコンプライアンス」を実装できるようになるという。

オドゥアール氏は、サプライチェーン混乱への対応に向けたAIベースのサプライヤーインサイトにも言及した。Auraは、外部システムを含むデータ統合能力を基盤にリスクを早期に把握し、必要な対応策を提案することで、復旧の迅速化につなげるとした。

そのうえで同氏は、「産業向けAIは単に情報を見せるだけではなく、ユーザーがすぐ行動に移せるインサイトを提供すべきだ」と指摘。「バーチャルツイン、クロスプラットフォームAI、40年にわたる産業知見を組み合わせた実行型AIが、それを可能にする」と強調した。

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