「塩バッテリー」とも呼ばれるナトリウムイオン電池が、次世代の蓄電技術として注目を集めている。スマートフォンなど小型機器への採用はエネルギー密度の面でなおハードルが高い一方、低コストと安全性を背景に、大規模な蓄電分野では有力な選択肢になり得るとの見方が出ている。
米ITメディアのPhoneArenaが10日(現地時間)に報じたところによると、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と基本原理が近い。正極と負極の間をイオンが電解質を介して移動し、充放電を繰り返す仕組みで、主な違いはリチウムの代わりにナトリウムイオンを用いる点にある。
ただ、ナトリウムイオンはリチウムイオンより大きく重い。化学的な性質は似ていても、同じ体積・重量当たりで蓄えられるエネルギー量は少なく、エネルギー密度で不利になりやすい。
現在開発が進むナトリウムイオン電池は、18650サイズの円筒形セルで生産されており、エネルギー密度は90Wh/kg前後とされる。一方で、2000回の充放電後も容量の80%を維持できる耐久性は強みといえる。
この水準は初期のリチウムイオン電池に近いが、最新のスマートフォン向け電池が150〜300Wh/kg程度に達していることを踏まえると、差はなお大きい。Galaxy S26のような次期フラッグシップ機への搭載は現実的ではないとの見方が強い。
それでも、ナトリウムイオン電池には別の競争力がある。原料となるナトリウムはリチウムに比べてはるかに豊富で、抽出や加工にかかるコストも低い。
埋蔵地域が偏在しやすいリチウムと比べ、ナトリウムは地理的な偏りが小さく、サプライチェーンリスクを抑えやすい。電池産業で原材料の安定確保が重要性を増すなか、こうした点は戦略面での利点とみなされている。
安全性の高さも注目される。ナトリウム系電池は火災リスクが比較的低いとされ、大型の蓄電システムに適した特性を備える。
このため、エネルギー貯蔵装置(ESS)や再生可能エネルギーと連携する蓄電設備、家庭用蓄電システムなど、定置型の用途で活用が広がる可能性がある。エネルギー密度よりも費用対効果や安定運用が重視される市場では、十分な競争力を持ち得るというわけだ。
一部では、ナトリウムイオンの特性を生かして急速充電の可能性を指摘する声もある。ただ、現時点の技術水準では、リチウムイオン電池を上回る充電速度の実現は容易ではないとの見方もある。
専門家は、商用化を左右する最大の課題としてエネルギー密度の向上を挙げる。物理特性の制約から、同じ空間に取り込めるナトリウムイオンの量には限界があるが、電極材料や電解質の改良が進めば、性能差を縮められる可能性はある。
もっとも、短期的にスマートフォン市場を置き換えるというよりは、全固体電池など他の次世代電池と役割を分担しながら普及していく公算が大きい。
ナトリウムイオン電池は、スマートフォン向けのゲームチェンジャーというより、蓄電市場の構図を変える可能性を持つ技術として位置付けられそうだ。リチウム依存を引き下げようとする動きが世界で広がるなか、その進化が注目される。