人工知能(AI)の導入が業務を効率化するとの期待が高まる一方で、実際の職場では負担軽減につながらず、かえって疲労やバーンアウトを強めている可能性があることが分かった。TechCrunchが10日、Harvard Business Reviewに掲載された研究を基に報じた。
研究をまとめたUC Berkeleyの研究チームは、AIを積極的に活用しているIT企業で働く従業員約200人を対象に、8カ月にわたって実態を調査した。あわせて40件超の詳細なインタビューを実施し、AI導入後の働き方の変化を追跡した。
調査では、AIツールによって生産性が高まる一方、その分だけ処理すべき業務も増え、仕事が昼休みや夜間にまで及ぶケースが確認された。AIで効率が上がれば余力が生まれるとの見方とは逆に、現場では業務の拡大を招いた形だ。
あるエンジニアは、「AIのおかげでより多くの仕事をこなせるようになったが、結果として働く時間も長くなった」と話した。Hacker Newsでも、「AI導入後、チームに求められる水準は3倍に高まったが、実際の生産性向上は10%程度にとどまった」といった反応が出ている。
研究チームは、AIが従業員の業務を補完するというより、疲労感やストレスを増幅させていると警告した。業務革新への期待が高まるほど、組織が求める処理速度や対応水準も引き上げられ、結果としてバーンアウトにつながりやすくなるという。
これとは別に、米全米経済研究所(NBER)が昨年夏に公表した調査でも、数千の職場におけるAI導入を追跡した結果、生産性の改善は時間節約ベースで3%にとどまった。職種を問わず、収入や労働時間に統計的に有意な変化は見られなかったとしている。
UC Berkeleyの研究チームは、AIが従業員の業務遂行能力を高める側面は認めつつも、その効果が必ずしも負担の軽減にはつながっていないと指摘する。むしろ、組織全体のスピード感や応答性に対する期待を押し上げ、疲労やバーンアウトを深刻化させる可能性があるとしている。