韓国の電池大手3社が、エネルギー貯蔵装置(ESS)を成長の柱に据え、2026年の業績回復を目指している。各社はESS事業をEVに迫る規模まで拡大しており、EV市場の低迷をESSで補う構図が本格化しつつある。
韓国電池大手3社のESS事業は、2026年にEV不振を補える規模へ拡大する見通しだ。未来アセット証券によると、LG Energy SolutionのESS事業部門の売上高は10兆2000億ウォンと、前年比233%増が見込まれる。Samsung SDIは世界首位の事業者向け大型案件を確保したとされ、SK Onも生産ラインの転換と安全技術をてこに本格参入を進める。
ESS需要が急伸する背景には、AIデータセンターの拡大に伴う電力需要の増加がある。ユジン投資証券によると、米国ではAIデータセンターの増設が進む一方、送電網接続の承認取得に最長4年以上かかるケースもあり、ESSが送電網制約を補う重要インフラとして位置付けられている。BloombergNEF(BNEF)ベースの2026〜2030年の米国ESS需要見通しは64〜113GWhだが、電池各社の市場予測を総合すると80〜150GWhに達し、従来想定を上回る可能性がある。
足元で最も積極的に動いているのはLG Energy Solutionだ。未来アセット証券は、2026年のESS売上比率が36%まで上昇し、EV事業部門の売上高10兆4000億ウォンに近い水準になるとみている。LG Energy Solutionによると、ESSの累計受注残は140GWh。2026年の新規受注目標は、過去最大だった前年の90GWhを上回る水準に設定した。ESS売上高についても前年比3倍超を目標に掲げている。
受注も年初から相次いでいる。LG Energy Solutionは先月、Hanwha Qcellsの米国法人と、2028〜2030年に5GWh規模を追加供給する契約を結んだ。2025年には米Terra-Gen(8GWh)、Excelsior Energy Capital(7.5GWh)、Delta Electronics(4GWh)、EG4 Electronics(13.3GWh)と相次いで契約を締結。2026年3月には、ポーランド国営電力会社PGEとも1GWh規模の契約を成立させた。
北米での生産体制拡充も進める。米ミシガン州ホランド工場は2025年6月に稼働を開始し、2026年中には同州ランシング工場とオハイオ州の合弁工場も追加稼働に入る予定だ。グローバルのESS生産能力は60GWhで、このうち北米が50GWhを占める。
LG Energy Solutionのキム・ドンミョン社長は2026年2月、従業員向けメッセージで「現在直面している状況は、産業の成長価値が再編されるバリューシフトの過程だ」と述べた。そのうえで「北米域内の生産設備と、SIベースのターンキーソリューション能力を同時に備える企業は、事実上LG Energy Solutionだけだ」とし、2026年の事業拡大に意欲を示した。
同社は第4四半期の決算説明会でも、「2026年はEV市場の成長鈍化とESS需要の台頭という構造変化が現実化する時期だ」と説明。「ESS事業の成長を加速し、EV事業の質的競争力強化に集中する」との方針を示した。
焦点はEVの固定費と関税
Samsung SDIも転機を迎えている。未来アセット証券は、同社が世界首位事業者向けESS案件を確保したと推定している。受注規模は年10GWh、3年間で30GWh超の角形LFP電池とされる。これを受け、未来アセット証券は目標株価を45万ウォンから50万ウォンへ引き上げた。IBK投資証券も41万ウォンへ上方修正している。IBK投資証券によると、北米拠点のSPE第4ライン(33GWh)のうち3ラインがESS向けに転換され、2026年末時点の北米ESS生産能力は29GWhに達する見通しだ。
SK Onは構造改革を終え、ESS参入の基盤整備を進めている。同社は2025年12月、Fordとの合弁会社「BlueOval SK」を清算し、テネシー工場(45GWh)を単独運営する方針を決めた。EV向けに加え、ESS向け供給にも対応できる体制への切り替えを進める。2026年には忠清南道・瑞山工場のライン転換を通じて、年3GWh規模のESS向け電池生産ラインを整備する計画だ。あわせて、業界で初めて電気化学インピーダンス分光法(EIS)に基づく火災早期検知技術を適用する。
今後の焦点は、ESSの売上拡大がEV不振をどこまで補えるかにある。未来アセット証券は「ESSだけでも十分に増益が見込める局面に入った」としたうえで、「北米EVに対する懸念は相当程度織り込まれており、ESS実績を背景とした増益は2027年まで続く」と分析した。一方で、北米EVラインの稼働率低下に伴う固定費負担や、関税を巡る不確実性は変動要因として残る。業界関係者は「2026年の韓国電池各社の業績は、ESSへの転換スピードがどこまで速くEVの損失を埋められるかにかかっている」と話した。