Dassault Systèmesは、年次会議「3DEXPERIENCE World 2026」で、設計業務を支援する新たなバーチャルコンパニオン「Leo」と「Marie」を公開した。いずれもプレビュー版として披露し、2026年上期中の正式投入を予定する。活用効果を左右する要素として、同社は企業内データの整備とクラウド基盤でのデータガバナンス強化の重要性を訴えている。
Dassault Systèmes Koreaのペ・ジェインCRE本部長は、「エンジニアリングAIとは何かを具体的に示した」と述べ、今回の発表が一般的な大規模言語モデル(LLM)とは異なる、実務寄りのエンジニアリングAIの実装例だと強調した。
今回のLeoとMarieの追加により、Dassault Systèmesは、2025年に投入した「Aura」と合わせ、設計業務を支援するバーチャルコンパニオンの製品群をそろえた。価格体系は未定だが、利用量に応じた課金モデルが有力としている。
同社によると、Auraはアイデア創出や探索に強みを持つ。社内データとWeb上の外部知識をつなぎ、ユーザーが設計アイデアを具体化するのを支援する。
一方、Leoは製造可能性や設計の実現性を検討し、実際の生産につながるデザイン提案を担うエンジニア向けAIと位置付ける。Marieは科学的根拠に基づく解析を担い、落下試験や人間工学評価、医療機器規制への対応といった高度な領域までカバーする。
同社は、LeoとMarieの投入によって、バーチャルコンパニオン群がエンジニアリングAIとしての役割をより明確に担えるようになったと説明する。
ペ本部長は「Auraはすでに提供してきたが、エンジニアリングソリューションとしての役割は限定的だった。LeoとMarieは、エンジニアリングAIのロードマップを具体化した点に意義がある」と語った。
Dassault Systèmesは、LeoとMarieが設計者を置き換えるものではなく、設計生産性の向上を主眼とする点も強調する。AIが一部業務を代替する可能性はあるものの、設計担当者の役割は引き続き重要だとしている。
ペ本部長は半導体装置メーカーを例に挙げ、「コンセプト設計から生産までの期間短縮が喫緊の課題になっている一方、設計部門が生産部門の要求に追いつかないケースがある」と説明した。そのうえで、「特に中堅・中小企業では、バーチャルコンパニオンの導入によって市場投入までの期間を大きく縮められる」と述べた。スタートアップについても、アイデアを実際の製品や事業に結び付けるまでの時間を大幅に短縮できるとの見方を示した。
LeoとMarieは、Dassault Systèmesが蓄積してきたエンジニアリング関連データと、顧客企業が保有する自社データを基盤に動作する。顧客データは顧客側が管理し、Dassault Systèmesを含む外部から閲覧できないという。
なかでも、企業が保有する設計関連データの整備状況は、バーチャルコンパニオンの効果を大きく左右する要素だ。同社は、導入に先立って社内の設計データをAI活用に適した形に整備し直し、最適化することが優先課題になるとみている。
こうした認識を踏まえ、Dassault SystèmesはAIに最適化したデータガバナンスの重要性も訴える。韓国の製造業では、この面での備えがなお十分ではないとの見方があるためだ。
ペ本部長は「Dassault Systèmesのプラットフォームはクラウド基盤で動いている。企業は自社データをクラウドに載せ、それを土台に知識を拡張していく必要がある」と述べた。さらに「知識ベースを企業のノウハウへ発展させるには、結局データがクラウド上にあることが前提になる」と話した。
Dassault Systèmes Koreaは、国内のバーチャルコンパニオン事業について、大手製造業よりもまず中堅・中小企業を重視する方針だ。ペ本部長は「中堅・中小企業にとって、自前でAIやエンタープライズソリューションを構築するのは容易ではない」としたうえで、「クラウドから始めれば、投資の拡張性と互換性を確保しやすい」と述べた。
自然言語のプロンプトに基づいて利用するバーチャルコンパニオンは、従来マウス操作を中心に業務を進めてきた設計担当者にとって、インターフェースの大きな変化を意味する。使い慣れた操作体系からの移行が容易ではない可能性もあることから、Dassault Systèmesは導入障壁を下げるための支援や教育を提供する考えだ。
ペ本部長は「プロンプトエンジニアリングは、設計担当者にとって、SolidWorksの習得と同じように新たに学ぶべき領域になり得る」とし、「効果的に支援していく」と述べた。
Dassault Systèmesは、バーチャルコンパニオンの拡充によってSolidWorksの活用領域も広がるとみている。ペ本部長は「ロボット分野に限らず、ライフサイエンスでもバーチャルツインとAIへの関心が高まっている」とし、「2026年は韓国でもライフサイエンス分野の開拓を加速する」と述べた。