イーロン・マスク氏の純資産が8450億ドル(約12兆6750億円)に達し、世界初の「1兆ドル資産家」入りが現実味を帯びてきた。資産拡大の主因はTeslaではなく、SpaceXとxAIの統合による企業価値の押し上げだ。
CNBCやForbesなどが7日(現地時間)に報じたところによると、マスク氏の純資産は史上初めて8000億ドルを突破した。Google共同創業者のラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏、Metaのマーク・ザッカーバーグCEOの資産を合計した額を上回る水準という。
背景にあるのは、宇宙・防衛事業を手掛けるSpaceXとAI企業xAIの統合だ。統合後の企業価値は約1兆2500億ドル(約18兆7500億円)とみられ、マスク氏が保有する約43%の持ち分価値は5300億ドル(約7兆9500億円)を超えると推計されている。
この結果、マスク氏の資産の約3分の2をSpaceX関連が占める構図になった。
最近の開示資料でも、純資産の大半はすでにTesla以外の事業から生み出されていると説明しており、資産構成の重心がTeslaからSpaceXへ移っていることがうかがえる。マスク氏はかねて、2026年のSpaceX上場の可能性に触れており、Tesla株への依存を抑えながら大規模な資金を確保する戦略との見方もある。
一方、Teslaの比重は低下傾向にある。マスク氏のTesla持ち分は約11〜15%とされるが、足元では株価下落に加え、中核の自動車販売の鈍化やロボタクシー、ヒューマノイドロボット開発の遅れを背景に、持ち分評価額が約9%下がったという。
SpaceXとTeslaの持ち分価値が現在の水準で推移すると仮定した場合、マスク氏が1兆ドル資産家となるには、SpaceXの企業価値が約1兆6000億ドル(約24兆円)まで上昇する必要があるとの試算もある。
投資会社Gerber Kawasakiのロス・ガーバーCEOは、マスク氏がSpaceXを単独上場するのではなく、「X」ブランドの下で複数事業を束ねたうえで上場に踏み切る可能性があると指摘した。大規模な資本調達を目的に、Xをニューヨーク証券取引所へ上場させるシナリオも示したが、マスク氏は公式な見解を明らかにしていない。
もっとも、規制リスクは無視できない。xAIは欧州、アジア、オーストラリア、米カリフォルニア州などで規制当局の調査を受けており、画像生成ツール「Grok」が児童や女性を描いたディープフェイク画像の拡散に関与した疑いも指摘されている。
米民主党の上院議員らは、SpaceXに対する中国資本の非公開投資の有無について調査を求めている。
マスク氏の資産拡大は、政治的影響力の拡大を巡る議論も呼んでいる。国際支援団体Oxfamは最近の報告書で、今後10年以内に1兆ドル規模の資産を持つ富豪が5人誕生する可能性があると予測し、その筆頭候補にマスク氏を挙げた。
その一方でOxfamは、富裕層の資産が急増するなかでも世界の貧困率は数十年にわたり停滞していると指摘。各国政府に対し、富豪への課税強化と権力の分散を求めている。
専門家の間では、マスク氏の1兆ドル資産家入りはもはや荒唐無稽な話ではないとの見方が広がる。鍵を握るのは電気自動車ではなく、ロケットや衛星、そして宇宙関連のAIインフラになりそうだ。