QuantumScapeは全固体電池の商用化に向けて新たな段階に入った。米サンノゼ本社でパイロット生産ライン「Eagle Line」を稼働し、無負極リチウム金属電池セルの自動生産を開始した。量産工程の再現性や歩留まりを検証し、顧客評価につなげる。
電気自動車メディアのInsideEVsが2月8日(現地時間)に報じた。QuantumScapeは、同社の全固体電池について、高エネルギー密度、急速充電、高出力、安全性の向上を同時に実現する技術と位置付けている。電気自動車の航続距離や性能の改善が期待される一方、商用化に向けた最大の課題は量産体制の確立にあった。
今回稼働したEagle Lineは、その課題を検証するためのパイロットラインだ。シバ・シバラムCEOは、これを「Kitty Hawk moment」と表現し、実現が難しいとみられていた技術が現実の生産段階に入った節目だとの認識を示した。
同社によると、電池セルはすでに自動化ラインでの製造を始めている。研究開発段階にとどまっていた技術が、量産を見据えた製造プロセスの検証段階へ移ったことになる。
Eagle Lineでは、ニッケル系正極と特殊なセラミック分離膜を積層して薄型の単位セルを形成し、それを重ねることで容量5Ahの商用電池を製造する。生産量は明らかにしていないが、出力、歩留まり、稼働時間、品質の安定性を重点的に検証する計画だ。
QuantumScapeの戦略は、自社で電池を大規模生産するのではなく、技術をライセンス供与し、自動車メーカーなどのパートナーに展開する点にある。このためパイロット工場の役割も、大量生産そのものではなく、再現性のある製造工程を顧客に示すことに置いている。
同社は、多数のセルを実際に製造・評価しながら改良を重ねることが、顧客の信頼獲得に直結すると説明している。
用途開拓も進めている。QuantumScapeは昨年、二輪メーカーのDucatiの車両に同社の全固体電池を搭載した実証を開始した。主要パートナーとしてVolkswagenを挙げるほか、社名を公表していないグローバル完成車メーカーとも協業しているとしている。
商用化の時期については慎重な姿勢を崩していない。共同創業者でCTOのティム・ホーム氏は、今後10年以内に、比較的小容量で高性能な車種から採用が始まる可能性が高いとの見方を示した。
初期段階では少量生産の高性能車向けが中心となり、その後、技術の成熟に応じて大衆市場へ展開が広がる可能性があるという。
同社は、全固体電池が既存のリチウムイオン電池を全面的に置き換えるのではなく、用途に応じて併存するとみている。コストや寿命が重視される定置型エネルギー貯蔵システムと、エネルギー密度や軽量化が重視されるモビリティでは、求められる電池性能が異なるためだ。
全固体電池を巡る開発競争が激しさを増すなか、QuantumScapeは「最初に市場へ出すこと」よりも継続的な競争力を重視する。ホームCTOは「電池市場で勝つとは、一度勝つことではなく、毎年競合を上回り続けることだ」と述べ、スピードだけでなく技術の成熟度と実行力が重要だと強調した。