中国の航空スタートアップAutoFlightが、電動垂直離着陸機(eVTOL)市場で攻勢を強めている。香港紙South China Morning Postが2月8日付で報じたところによると、同社はこのほど、10人乗りの5トン級eVTOL「Matrix」を公開し、上海近郊の崑山にある試験施設でデモ飛行を実施した。
Matrixは、翼幅20メートル、全長17.1メートル、高さ3.3メートル。10人乗りの旅客輸送に加え、重量物輸送にも対応する大型機として開発した。既存のeVTOLの多くが1.5〜3トン級、4〜6人乗りにとどまる中、機体の大型化が特徴となる。
AutoFlightは、EHang、Xpengのフライングカー部門AeroHT、Geely傘下のAerofugiaと並ぶ中国eVTOL業界の有力企業の一つとされる。中国政府も国家戦略として「低空経済」の育成を進めており、制度整備を急いでいる。
直近では、市場監督部門や交通運輸部門などを含む10省庁がガイドラインを公表した。2027年までに基本基準を整備し、2030年までに300件超の航空関連標準を確立する方針を盛り込んだもので、機体開発、インフラ、航空交通管理、安全監督、活用シナリオの5分野を重点領域に位置付けた。
2017年設立のAutoFlightは、当初は貨物輸送向けに注力してきたが、今後は旅客輸送市場にも軸足を広げる方針だ。現在は旅客向け機体の受注が全体の約70%を占めており、今後1〜2年で旅客機の認証取得を見込むとしている。
商用eVTOLの運航には、設計認証、生産認証、機体ごとの耐空証明という3段階の手続きが必要となる。
同社の既存機には、自律物流向けの「CarryAll」と空の移動向けの「Prosperity」がある。このうち2トン級貨物機のCarryAllは、中国で唯一、設計・生産・耐空の3認証をすべて取得したトン級eVTOLとされる。直近では、安慶から合肥まで約160キロの貨物輸送飛行にも成功した。
CATLはAutoFlightの筆頭株主で、株式の38%を保有する。電池の研究開発も全面的に支援しているという。
業界では2026年を、各社が試作段階から商用製品段階へ移行する節目とみる向きが強い。調査会社CCIDコンサルティングは、中国初のフライングカーによる旅客輸送が2026年に始まるとの見通しを示しており、同年だけでも少なくとも7社が商用モデルを投入すると予測した。
AutoFlightは、航空移動のコストを高級配車サービス並みの水準まで引き下げることを目標に掲げる。今後3〜5年以内の本格商用化を目指すとともに、インフラ不足が課題となる地域を中心に海外展開も視野に入れる。重点市場には北東アジア、東南アジア、中東を挙げている。