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Anthropicが企業向けAI市場で急速に存在感を高めている。Claudeの新機能公開と最新モデル投入をきっかけに、ソフトウェア業界への脅威を指摘する見方が広がり、株式市場では関連銘柄の下落も目立った。「ソフトウェアの死」という強い表現まで出回るなど、市場の関心は一段と高まっている。

大規模言語モデル(LLM)を軸とするAI市場で、AnthropicはこれまでOpenAI、Googleと並ぶ有力プレーヤーとみなされながらも、存在感では一歩後ろにいるとの見方が強かった。だが、年初以降はその構図に変化が生じている。

ここ数日も、Anthropicを主役に据えたAI関連報道が相次いだ。OpenAIやGoogleを上回る勢いだと評価する論調も出ている。

転機の一つとなったのは、Anthropicが1月に公開したAIツール「Claudeコワーク」だ。開発者でなくても業務向けツールを構築できる点が注目を集め、プレビュー版でありながら既存ソフトウェア市場を揺るがしかねないとの見方につながった。

実際、公開後には主要ソフトウェア企業の株価が下落し、少なくとも株式市場ではAnthropic発の脅威が現実味を帯びた。AI・テック業界にとどまらず、経済全体への影響にまで論点が広がった背景には、こうした市場の反応がある。この過程で「ソフトウェアの死」という言葉も広く流通するようになった。

5日(現地時間)に発表した最新モデル「Claude Opus 4.6」も、この議論をさらに押し広げた。発表後にはSalesforceやIntuitなどソフトウェア企業の株価が再び下落した。

Anthropicによると、Claude Opus 4.6は新たな手法で学習させたモデルで、アプリケーションやデータベースとの連携に重点を置く。データ分析や統合に加え、コーディング支援、チーム運用、プロダクト管理に近い機能にも対応するという。

米国革新財団の上級研究員でAI関連ニュースレターを発行するディーン・ボール氏はWall Street Journal(WSJ)に対し、「Anthropicのモデルに対する評価が広く浸透したことは、ChatGPTの登場以降、AI分野で最も重要な出来事だ。非常に興味深い」と語った。

設立5年目のAnthropicは、企業向け市場と開発者を狙うLLM戦略を一貫して打ち出してきた。個人ユーザーまで広く取り込むOpenAIやGoogleに比べ、相対的に注目度が低かったのはこのためでもある。

ただ、知名度ではなく事業面の成果に目を向ければ、評価は変わる。選択と集中の戦略が、企業向け市場や開発者市場での優位性につながったとの見方が強まっている。

Financial Times(FT)が最近報じたところによると、Anthropicの年換算の売上高は昨年初めの10億ドルから、昨年末には90億ドル超に拡大した。Anthropicは投資家に対し、今年は年換算の売上高が300億ドル超に達し、その後も高成長が続くとの見通しを示したという。

FTは投資家12人の話として、企業向け市場でのシェア、明確な製品戦略、安定した経営体制を背景に、Anthropicは長期的にみてOpenAIより安全な投資先と受け止められつつあると伝えた。

シリコンバレーのベンチャー投資会社Menlo Venturesによると、2025年上半期時点でAnthropicは企業向けLLM APIの利用量でOpenAIを上回り、首位に立った。市場シェアはAnthropicが32%、OpenAIが25%、Googleが20%、Metaが9%だった。

2023年末時点では、OpenAIが企業向けLLM API市場の約半分を握っていたが、その優位を維持できなかったという。

WSJが引用したコスト管理スタートアップRampのデータでも、1月時点でAnthropicはAPI関連支出シェアの80%を占め、首位だった。API費用は、利用者が外部サービス経由でモデルにアクセスする際に発生する。

AIコーディングツール市場でも、Anthropicの存在感は大きい。同社の「Claude Code」は、リリースから1年余りで年商10億ドル規模に達する勢いとされる。

2023年にAnthropicへ初めて投資したMenlo Venturesのパートナーによると、Claude Codeは当初、社内利用を目的に開発されたが、完成度の高さを踏まえて製品として本格展開したという。

Claude Codeは、Anthropicが企業向け市場で優位を築くうえで中核的な役割を果たした。ソフトウェアエンジニアリングは企業顧客の獲得に直結する領域であり、経営陣はここを起点に他分野へ拡張できると判断していた。コーディング能力に優れたモデルは、最終的にコンピュータ上のほぼあらゆる作業をこなせるようになるとの考え方が背景にある。

WSJによると、企業向けAIツールを構築・管理するスタートアップRetoolの最高経営責任者(CEO)は、「Anthropicは企業市場を攻めてきたが、結局の中核はコーディングだと気付いた」と話した。

Anthropicは企業価値3500億ドルで、350億ドル規模の資金調達を目前に控えるとされる。年内には、LLM開発スタートアップとして初の新規株式公開(IPO)も目標に掲げている。

もっとも、資金調達は想定水準で実現するとの見方がある一方、IPOについては現在の勢いをどこまで維持できるかで市場の空気が変わる可能性もある。

GoogleやOpenAIもコーディングAIとエンタープライズ市場の開拓を加速している。そうしたなかでAnthropicが優位を維持し、さらに強めることができれば、AI市場を動かす存在としての影響力は一段と増しそうだ。2026年は、同社にとって極めて重要な1年になりそうだ。

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