Wemadeは1月29日、独自レイヤー1メインネット「Stablenet」の具体的な技術仕様を公表した。ステーブルコインを手数料支払いにも使える単一コイン設計を採用し、既存ブロックチェーンで課題とされてきた煩雑なUXや取引情報の過度な可視化を改善することで、実金融分野での活用を狙う。
同日、ソウル市江南区のオークウッドホテルで開かれた「韓国ウォン・ステーブルコイン テックセミナー」で、ソン・ウサン氏(Wemadeメインネット開発チーム長)が概要を説明した。ソン氏は「8年間ブロックチェーンを使いながら、なぜ日常に広がらないのかを考えてきた。最終的に、ステーブルコインに最適化した専用チェーンを自社で構築するのが最も妥当だとの結論に至った」と述べた。
ソン氏は、ブロックチェーンが日常用途に広がらない理由として、操作の煩雑さと企業の決済用途に適しにくい点を挙げた。価格変動の大きい暗号資産は決済手段として使いにくく、USDCなどのステーブルコインを使う場合でも、ガス代の支払い用に別のコインを保有しなければならないことが普及の妨げになっているという。
加えて、パブリックチェーンでは全取引履歴が公開されるため、企業が給与を支払えば従業員ごとの報酬水準がオンチェーン上で露出しかねない点も問題視した。秘密鍵の管理負担も大きいとし、自身の経験として「過去に秘密鍵を暗号化してメールに保存していたが、メール流出でハッキング被害に遭った。一般ユーザーにとって管理は難しく、チェーン側でも直接対応できない」と語った。
既存の代替手段についても限界を指摘した。プライベートチェーンは外部連携が閉じやすく、レイヤー2についてはEthereum側の制約を受けやすいほか、ペイマスターを通じて事業者がガス代を肩代わりする構造では継続的なコスト負担が避けられないとした。
こうした課題への対応策として、WemadeはStablenetを独自のレイヤー1メインネットとして設計した。Hyperledger BesuベースのQBFTをフォークし、自社開発の「WBFTコンセンサスアルゴリズム」を適用した。1秒ごとにブロックを生成し、そのまま確定する仕組みで、高速な取引処理を実現する。
ソン氏によると、直近の性能測定では3000TPSを確認した。今後のチューニング次第では、さらに性能を引き上げる余地があるという。
Stablenetの大きな特徴は、「ネイティブコインアダプター」技術を通じて、基軸通貨の「WKRC(仮称)」を手数料支払いにも使えるようにした点だ。ユーザーはガス代のために別のコインを用意する必要がなく、1つのステーブルコインだけで送金や決済を完結できる。Circleが開発したステーブルコインのトークン標準バージョン2.2をベースにしつつ、ERC-20インタフェースにも対応し、外部サービスとの連携性を確保したとしている。
セキュリティ面では、緊急停止機能に加え、資産凍結後の回収フローも備えた。ソン氏は「USDCにも緊急停止機能はあるが、凍結後の後続手続きは限定的だ。Stablenetでは自発的な返還を促す仕組みを設け、それが難しい場合には強制回収まで可能にした」と説明した。
権限管理はガバナンスコントラクトに分散した。チェーンのアップグレードを担うガバナンスバリデーター、コインの発行・バーンを担うガバナンスミンター、ミンターの登録・削除を担うマスターミンター、ブラックリスト登録を担うガバナンスカウンシルに役割を分けた。検証者は1トランザクション当たり約1ウォンの手数料収入を得るモデルで、ソン氏は「ネットワークの利用が拡大すれば十分に事業性がある」と述べた。
匿名性と規制対応の両立策としては、「シークレットアカウント」と専用ウォレットを提示した。ERC-5564標準のステルスアドレス技術を応用し、EIP-7702と組み合わせることで、自動振替やガス代の肩代わり機能も実装したという。
ソン氏は、受信者がワンタイムアドレスを都度生成する方式は管理負担が大きいとした上で、「Stablenetではトランスファーサーバによってその処理を自動化した」と説明した。ブロックチェーン上では送金元、送金先、金額の対応関係を外部から把握しにくくし、企業の給与支払いや秘匿性の高い送金にも対応できるとしている。
一方で、規制当局や監査機関への対応も想定した。トランスファーサーバがマッピング情報を保有しており、台帳の提出を求められた場合には提出可能だという。ソン氏は「金融取引には透明性が必要だが、取引当事者にはプライバシーも必要だ。既存のパブリックブロックチェーンのように、あらゆる情報が完全に公開される環境は適していない」と強調した。
専用ウォレットは2月中に公開する予定だ。キム・ソクファン氏(Wemade副社長)は同日午前の発表で、「ウォレット開発はかなり進んでおり、旧正月連休明けにパートナー企業へ配布する」と明らかにしていた。
質疑応答ではセキュリティに関する質問が相次いだ。ソン氏は、ChainlinkのCCIP(Cross-Chain Interoperability Protocol)を導入し、安全性を高めたと説明した。
キム氏は「Chainlinkは重大事故のない実績を持つグローバル有力ソリューションで、JPモルガンなど主要プレイヤーも利用している」と述べ、信頼性を強調した。アン・ヨンウン氏(Wemade CTO)は「仮にブリッジで問題が起きても、メインネット側で異常取引を検知し、資産を凍結または強制回収できるよう設計した。被害の拡大を防ぐ狙いだ」と語った。
競合チェーンに対する優位性について、キム氏は「国内でPoC段階を超えてテストネットを立ち上げ、具体的な技術実装まで進めた企業は当社だけだ。ライトペーパー段階ではなく、実装で市場をリードしていく」と述べた。
最後にソン氏は、「これまでは誰でもブロックチェーンサービスを作れた分、副作用も多かった。今後は規制を順守しながら、ユーザーが簡単に使える『価値中心』のブロックチェーンへ進むべきだ」と締めくくった。