シリコンバレーの将来を巡る懸念が強まっている。写真=Reve AI

Coinbaseの元最高技術責任者(CTO)、バラジ・スリニバサン氏は、シリコンバレーの優位性はもはや盤石ではなく、政治リスクや政策変更次第では急速に弱体化しかねないとの見方を示した。そのうえで、空白を埋める存在として暗号資産ネットワークやインターネット基盤の重要性が高まると主張した。

ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが1月28日(現地時間)に報じたところによると、同氏はカリフォルニア州で提案されている2026年の「ビリオネア税」法案を、シリコンバレーのエコシステムを揺るがす要因の一つに挙げた。法案は、純資産10億ドル(約1500億円)超の個人を対象に、5%の時限課税を課す内容とされる。

同氏は、この課税がスタートアップを支えてきたベンチャーキャピタルの土台を揺るがしかねないと指摘した。「ベンチャーキャピタルは、少数の超大型成功案件が多数の失敗を埋め合わせるパワーローに基づく業界だ。億万長者がいなくなれば、エンジェル投資もシリコンバレーも成り立たない」と述べた。

そのうえで、「課税法案は、成立しなくても議論されるだけでリスクテイクやアーリーステージ投資を冷やしかねない」と警告した。

法曹界からも懸念の声が上がっている。Baker Bottsを含む複数の法律事務所は、この法案について、休眠通商条項違反や遡及課税、財産権侵害など、憲法上の問題を抱える可能性があると指摘した。

一方、PwCは、法案が2026年11月に承認された場合、約1000億ドル(約15兆円)の税収を確保できると試算している。あわせて、テック資産への課税強化を求める政治的圧力が強まっているとも分析した。

スリニバサン氏は、今回の論争を単なる税制論議にはとどまらず、テック業界が依拠してきた政治的な基盤が揺らいでいる兆候だと捉える。財産権や株式報酬、ビザ制度、IPOルートに加え、AIや暗号資産を巡る規制でも不確実性が広がっているとした。

また、テック業界は左右両陣営から批判を受け、政治的に孤立しつつあるとの見方も示した。

一部の創業者や企業はすでにテキサスやマイアミ、ドバイ、シンガポールなどへ拠点を移している。ただ、多くのテック企業はいまなおカリフォルニア、デラウェア、ニューヨークに深く根を下ろしており、同氏はこれらの地域の事業環境も徐々に業界に不利な方向へ向かっていると警鐘を鳴らした。

もっとも、技術革新そのものが失われるとは見ていない。シリコンバレーの独占的な地位が弱まる過程にあるだけだと説明する。すでに技術開発は分散が進み、ハードウェア製造は中国に移り、ユニコーン企業は世界400超の都市で生まれているという。

オープンソースAIの広がりによって、特定地域の人材ハブへの依存も低下していると述べた。

こうした環境のなかで、同氏は暗号資産が相対的に有利な位置にあると評価する。暗号資産プロトコルは特定の国家や規制に縛られにくく、グローバルなネットワークとして機能するうえ、分散型の構造によって政治的ショックにも耐性があるとした。

同氏は現在の状況を「絶滅イベント」に例えた。シリコンバレーは巨大だが脆弱な恐竜に近く、暗号資産やインターネットネイティブのネットワークは小規模でも環境変化に適応する哺乳類のような存在だという。カリフォルニア州の富裕層課税案が2026年の投票を控えるなか、テック業界の次の中核がどこに、どのような形で根を下ろすのかに注目が集まりそうだ。

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