Cellweaversは、動物由来バイオ原料を細胞培養によって供給する技術の事業化を進めている。主力は、エンドトキシン試験向けの「C-LALテスト」と抗凝固薬原料「C-ヘパリン」。動物資源に依存してきた供給構造を見直し、供給安定性と安全性の確保につなげる考えだ。
医薬品やバイオ医療の分野ではこれまで、動物由来原料への依存を前提に産業が発展してきた。一方で、動物の犠牲を伴う原料供給は、供給不安や安全性への懸念、規制強化、倫理面の課題から制約が強まっている。
とくに、化学合成や植物・昆虫由来への置き換えが難しい原料として、カブトガニの血液由来のエンドトキシン試験原料や、豚の腸粘膜由来のヘパリン原料がある。個体数の減少や動物疾病、地政学リスクが、安定調達と原料安全性の両面に影響を及ぼしているという。
こうした構造的な課題の解消を目指して設立されたのがCellweaversだ。チョ・ゴンシク代表は、「現場で不可欠な動物由来原料の供給構造が不安定で、時に危うさも抱えている現実に何度も直面してきた」としたうえで、「その問題を根本から解決する技術を開発するためにCellweaversを立ち上げた」と説明する。
同社は、細胞培養技術を活用して動物由来バイオ原料を供給することを目標に掲げる。医薬品、バイオ、医療機器向けに、安全性、再現性、持続可能性を備えた原料供給体制の構築を目指す。
チョ代表は、「単に動物代替原料を開発するのではなく、同じ物質の供給方法を動物個体から動物細胞へ切り替え、供給構造そのものを再設計する会社だ」と話す。技術開発にとどまらず、産業構造の転換を視野に入れる。
◆ 主力はC-LALテストとC-ヘパリン
同社の中核事業は2つある。1つ目は「C-LALテスト」だ。細胞培養をベースにしたエンドトキシン試験原料と、それを活用したキットの開発を進めている。
エンドトキシンは体内に入ると強い発熱反応を引き起こすため、ワクチン、バイオ医薬品、美容医療、植込み型医療機器の製品化ではエンドトキシン試験の通過が欠かせない。現在、事実上の標準手法とされているのが、カブトガニの血液細胞抽出物を用いるLALテストだ。
ただ、従来のLALテストはカブトガニの採血に依存しており、供給不足や価格変動に加え、環境面や規制面の問題も抱えてきた。
これに対し、CellweaversのC-LALテスト(Cultured LAL test)は、カブトガニの血液細胞を継続的かつ安定的に培養・増殖させることで、カブトガニを犠牲にせず同等原料を供給できる仕組みを構築したとしている。同社によれば、細胞培養で生産したC-LALテストは既存製品より低価格で安定供給が可能で、ロット間差も小さい。第三者機関からは、市販品と同等以上の感度を確認した評価報告を得たという。
短期間で技術開発を進められた背景には、チョ代表の研究・事業化経験がある。チョ代表は、浦項工科大学の博士課程で細胞を用いた腎組織の分化・発生を研究し、ジョンズ・ホプキンス大学医学部では博士研究員として幹細胞ベースの心筋細胞分化・成熟メカニズムに取り組んだ。
その後はバイオスタートアップで、ヒトiPS細胞由来の心筋、神経、肝細胞の分化および大量生産技術の開発と商用化を主導。グローバル企業への販売経験も持ち、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた動物代替の心毒性評価法の開発も率いたとしている。
さらに、共同代表を務めたがんオルガノイドベースの抗がん剤評価法・抗がん剤開発スタートアップは、創業から2年半で中堅企業にM&Aされた経験もあるという。
もう1つの主力製品が「C-ヘパリン」だ。ヘパリンは世界的に不可欠な抗凝固薬原料だが、供給が豚の臓器に依存しているため、疾病や地政学リスク、品質問題の影響を受けやすい。
同社は、細胞株ベースでヘパリンを生産することで、原料の安全性と一貫性の確保に加え、新薬開発や高付加価値用途へ展開できる基盤づくりにもつながるとみている。
Cellweaversは、単なる技術代替ではなく、動物由来原料の不安定な供給構造が引き起こす産業全体の連鎖リスクに着目する。チョ代表は「供給が不安定になれば価格が上がり、品質リスクも高まる。最終的には患者の安全にも影響する」と語る。
C-LALテストとC-ヘパリンに代表される同社の細胞培養技術は、この連鎖を断ち切ることを狙う。細胞培養という工業的な生産方式によって動物依存の構造を切り替え、安全性、供給安定性、拡張性を同時に確保する考えだ。
同社は、カブトガニや豚といった特定の動物資源に依存せず、一定かつ予測可能な量の原料供給が可能になるとしている。その結果、医薬品価格の安定化や品質管理の強化、患者アクセスの改善にもつながると見込む。
外部からの評価も進んでいる。Cellweaversは2024年6月の設立直後にシード投資を完了し、TIPS企業にも採択された。2024年12月には海東創業コンテストで大賞を受賞した。
2025年には、グローバル・オープンイノベーションプログラムを通じて、欧州拠点のグローバル企業との協業を進めている。また、中核バイオ素材をグローバル市場に供給する日本の素材企業とも、海外販売に向けた協議を始めたという。
これらの実績を背景に、2025年には、中小ベンチャー企業部と創業振興院の支援のもと漢陽大学が主管する「2025年度・創業中心大学」プログラムに選定され、優良企業との評価も受けたとしている。
◆ 中長期では原料供給インフラ企業を志向
チョ代表によると、Cellweaversの中長期的なビジョンは、動物由来バイオ原料を使うあらゆる産業にとって、まず想起される「原料供給インフラ企業」になることだ。短期的には、C-LALテストとC-ヘパリンの商用化、およびグローバルパートナーシップの構築に注力する。
中長期では、細胞培養ベース原料の国際標準化を進めるとともに、動物依存原料全般へポートフォリオを広げる方針だ。
チョ代表は「Cellweaversは技術企業であると同時に、供給安定性を設計する企業でもある」と述べ、「バイオ産業が抱える構造的リスクの解決が最終的な目標だ」と強調した。