韓国政府が5月1日の労働節に合わせ、労働者推定制の導入を柱とする勤労基準法改正の推進に乗り出す。労働者性の立証責任を事業者側に移す内容で、プラットフォーム業界では配達、コンテンツ制作、人材仲介など幅広い分野への影響を警戒する声が強まっている。
業界によると、雇用労働部が進める「働く人に関する権利基本法(仕事基本法)」と勤労基準法改正案の柱は、労働者性を巡る立証責任の転換にある。制度が導入されれば、プラットフォーム産業全般に影響が及ぶ可能性がある。
これまでは、特殊雇用従事者やフリーランスが賃金や退職金を請求する際、自らが労働者に当たることを立証する必要があった。今後は事業者側が、従事者による独立した事業運営、指揮・監督の不存在、勤務時間や場所を自ら決められることなどを示さなければならない。
それを立証できなければ、当該従事者は労働者と推定される。企業は最低賃金、退職金、4大保険への加入などの法的義務を負うことになる。
◆配達業界はコスト増を警戒 「料金転嫁は避けられない」との声
最も直接的な影響が見込まれているのが配達プラットフォームだ。業界では、約40万人のライダーを直接雇用した場合、年間の追加人件費だけで2000億ウォン(約221億円)を超えるとの試算が出ている。
配達料の引き上げや消費者物価の上昇につながり、最終的には雇用縮小を招くとの見方もある。
配達アプリ業界の関係者は「政府は正社員化を唯一の正解とみなし、あらゆる働き方をそこに当てはめようとしている」としたうえで、「プラットフォームの競争力を損なうだけでなく、事業撤退まで招きかねない過度な規制だ」と批判した。
現場では、正社員化そのものへの需要は大きくないとの見方もある。別の配達プラットフォーム関係者は「働いた分だけ収入になることがライダーにとって最大の利点だ」とし、「新型コロナ期には仕事量の減少への不満は大きかったが、正社員化を望む声は多くなかった」と話した。
実際、Woowa Youthsの物流子会社Delivery&は2022年、基本給4700万ウォンに4大保険やバイクのリース料支給を含む条件で、正社員ライダー100人の採用を進めた。しかし採用人数は最大でも40人にとどまり、その後は10人前後まで減少。事業は昨年末で終了した。
◆コンテンツ制作や人材仲介でも論点に 立証責任の所在巡り対立
ウェブトゥーンなどのコンテンツ業界でも影響が見込まれる。プラットフォーム、コンテンツ供給会社(CP)、作家へとつながる取引構造の中で、労働者性を誰がどこまで立証するのかが争点になっている。
対立はすでに表面化している。ウェブトゥーン労組は、Kakao Entertainmentなどに対し、CPを介さない直接交渉を求めている。
プラットフォーム側は、プロデューサー(PD)によるフィードバックを編集権の行使と位置付ける。一方、労働側は、原稿の修正指示や締め切り管理は実質的な業務指示に当たると主張している。
作家がアシスタントを雇う構造も論点だ。作家がプラットフォームに対して労働者性を主張する一方で、アシスタントに対しては使用者責任を負う構図になり得るためだ。
ウェブトゥーン業界の関係者は「作家の中にはアシスタントを使うケースが多い。法案が施行されれば、その点を巡る立証責任まで絡んできて、影響は小さくない」と話す。
一方、SoomgoやKmongなどのフリーランスプラットフォームについては、現時点では間接的な影響にとどまるとの見方が多い。最終価格の決定や業務の遂行を当事者に委ねているためだ。ただ、標準単価の提示や紛争仲裁への関与が過度になれば、法的責任を問われる余地はある。
人材仲介プラットフォームの関係者は「法案は国会で審議中で、詳細な基準もまだ固まっていない。現時点で影響を断定するのは難しい」と述べた。
労働側は制度の趣旨には賛同しつつ、適用範囲の補強を求めている。韓国労働組合総連盟は20日の声明で、現行の推定制度は勤労監督官の規定にとどまり、紛争解決の段階に限って適用される可能性が高いと指摘。そのうえで、労働者性の判断が労働関係全般に幅広く適用されるよう制度を見直すべきだと主張した。