Kakaoのチョン・シナ代表を巡り、3月の任期満了を前に再任観測が強まっている。創業者不在や司法リスクといった逆風のなかでも事業再編を進め、過去最高業績が見込まれていることが評価材料となっている。
再任観測の背景にあるのは、改革の成果が数値に表れている点だ。金融情報会社FnGuideによると、Kakaoの2025年通期の連結売上高は8兆873億ウォン、営業利益は6815億ウォンとなる見通し。前年に比べて売上高は2.7%増、営業利益は48.1%増となり、収益性の改善が鮮明になっている。
2025年第3四半期には、四半期ベースの営業利益が初めて2000億ウォンを超え、業績回復を印象づけた。
こうした改善は、チョン代表の就任後に進められた「選択と集中」戦略の効果とみられている。147社に達していた子会社数を2025年末時点で94社まで絞り込み、大規模なスリム化を進めた。
単なるコスト削減にとどまらず、拡張路線への批判が強かった事業構造を、プラットフォームとコンテンツを軸に再編した点も大きい。非中核事業を整理し、重点分野に経営資源を集中したことが、営業利益率の改善につながったとの見方が出ている。
次の成長戦略では、AIが中核分野の一つに位置づけられる。チョン代表は、無理に基盤技術の競争へ踏み込むのではなく、実際のサービス実装を優先する実用路線を選んだ。
2025年にはOpenAIとの提携を通じて、KakaoTalkに「ChatGPT for Kakao」を導入。リリースから10日で利用者数が200万人を超え、プラットフォームとしての集客力を示した。2026年第1四半期中には、自社開発AI「Kanana」をKakaoTalk内で提供する予定だ。
巨額投資を伴うインフラ競争ではなく、KakaoTalkにAIを組み込み、利用者が体感できるB2Cサービスで収益化を図る戦略といえる。AIの活用で滞在時間を伸ばし、広告やコマース収益の拡大につなげる考えだ。
再任後の次の成長テーマとして注目されるのが金融分野だ。KakaoはKakao Pay、Kakao Bankとともに、ウォン建てステーブルコインに関するタスクフォースを立ち上げ、事業化の準備を進めている。
これまでKlaytnなどを通じてブロックチェーン事業を展開してきたが、グループ内のシナジー不足が課題として指摘されてきた。今回の取り組みは、KakaoTalkの高い接点と金融関連会社のインフラを組み合わせ、Web3エコシステムの構築につなげる中長期戦略の布石とみられる。国内市場の制約を超え、グローバル決済網へ広げる戦略の中核になる可能性がある。
一方で課題も残る。2025年のKakaoTalk改編を巡る利用者の反発への対応と、信頼回復は引き続き重いテーマだ。KOSPIが上昇基調をたどるなかでも、株価は5万~6万ウォン台のもみ合い圏にとどまっており、チョン代表にとって優先度の高い経営課題とされる。
業界関係者は「キム・ボムス創業者の司法リスクなど内外の不確実性が続くなか、この2年間でチョン代表が築いた戦略の連続性を重視する声が強まっている」と話す。そのうえで、「今回の再任は、AIと金融という二つの軸を掲げる『チョン・シナ体制の第2幕』が、Kakaoの再成長を導けるかを見極める局面になる」と指摘した。