中国のAI半導体スタートアップIluvatar CoreXは、GPUアーキテクチャの複数年ロードマップとエッジコンピューティング向け新製品群を発表した。AI市場を巡る競争が激化する中、自社技術の強化を前面に打ち出した格好だ。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが27日付で報じた。今回の発表は、NVIDIAなど海外技術への依存を減らし、中国企業が独自技術の確立を急ぐ流れの一環とみられる。
同社は、初のアーキテクチャ「Tianshu(天枢)」について、昨年時点でNVIDIAの「Hopper」プラットフォームを上回る性能を示したと主張した。
後継の「Tianxuan(天璇)」は「Blackwell」への対抗を念頭に設計したという。さらに「Tianji(天玑)」は2026年にBlackwell超え、「Tianquan(天权)」は2027年に「Rubin」を上回ることを目標に掲げ、その後は革新的な新アーキテクチャへ移行する計画を示した。世代を連続的に進化させることで、世界GPU市場での競争力確保を狙う。
同社は、これら4世代のアーキテクチャを基盤にした複数の製品群を、北斗七星にちなんだ名称で展開する予定だ。
Tianshuでは、メモリアクセスの重複抑制や有効帯域幅の向上、消費電力の削減、動的なタスク配分によるリソース競合の低減など、効率改善を重視した設計を採用したと説明した。DeepSeek V3モデルによるテストでは、Hopper比で平均約20%高い性能を記録したとしている。
エッジコンピューティング向けには、「TY」シリーズ4製品もあわせて公開した。演算性能は毎秒100兆〜300兆回とし、このうち「TY1000」は複数のテストシナリオでNVIDIAの「AGX Orin」を上回ったとした。
同社は、AI学習向けに加え、リアルタイム処理やエッジコンピューティング分野でも競争力を確保する戦略を進めている。
Iluvatar CoreXは2015年設立。中国初の汎用AI学習向けGPUとして「TG」第1世代を投入し、その後は第2世代に加え、第3世代のTGも打ち出している。第3世代は2026年の量産を予定する。
推論専用の「ZK」シリーズは2022年に初投入し、学習用と推論用の両製品ラインを拡充してきた。
同社は1月8日に香港市場への上場を完了した。上場前の主要外部株主はCenturium Capitalで、約23%を保有していた。
上場後は、火曜日の終値ベースで株価が182香港ドル、時価総額は463億香港ドル(約60億ドル)となった。中国の主要AI半導体企業と比べ、相対的に成長余地が大きいとの見方もある。
目論見書によると、2022〜2024年の売上高はそれぞれ1億8900万元、2億8900万元、5億4000万元だった。平均成長率は68.8%。一方、純損失は5億5400万元から8億9200万元へ拡大した。
2025年上期の売上高は3億2400万元、純損失は6億900万元。損失拡大の要因として、研究開発投資の増加と新製品投入に向けた準備費用を挙げた。
また、2025年6月時点の汎用GPU累計出荷台数は5万2000台を超えたと明らかにした。研究開発投資と新製品ラインの拡充を通じ、市場シェアの段階的な拡大を進めていることを示した形だ。
一方、NVIDIAによる中国向け「H200」チップの販売再開を巡っては、米当局の承認と中国当局の対応を巡る不透明感が続いている。Jensen Huang最高経営責任者(CEO)は中国訪問中、顧客との面談や関連イベントに参加しているという。
世界GPU市場での競争激化と、中国におけるAI半導体の自立を目指す動きが並行して進んでいる構図が改めて浮かび上がった。