米国の暗号資産市場構造法案「CLARITY法案」を巡り、業界内の温度差が鮮明になっている。上院修正案を受けてCoinbaseが支持を撤回した一方、Rippleは法案成立を訴えており、主要企業の間で対応が割れている。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoによると、上院銀行委員会がCLARITY法案の全面修正案を示したことで、業界内の評価は分かれた。Coinbaseは修正案の通過後に支持を取り下げたが、Rippleは上院議員に対して成立を促し、支持姿勢を明確にしている。
一方で、Andreessen Horowitz(a16z)、Circle、Kraken、Digital Chamberなど、一部の主要企業や業界団体は上院修正案の市場構造法案を支持する動きを見せている。
CLARITY法案の焦点は、米暗号資産市場を誰が監督するのかという点にある。証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の所管を整理し、トークンの取引形態や取引所運営、ステーブルコインの位置付け、分散型金融(DeFi)の法的扱いを明確にする狙いがある。
ただ、上院修正案は下院通過案に比べて規制色が大きく強まった。SEC権限の拡大に加え、トークンの開示要件、ステーブルコイン報酬の制限、一部DeFi活動への監督強化などが盛り込まれ、単なる修正ではなく全面的な見直しに近いとの見方も出ている。
こうした変更は、企業ごとの利害にも影響を与えた。Coinbaseは、上院修正案によってCFTCの役割が後退し、SECの裁量が過度に広がることで、トークン上場や事業運営の不確実性が高まると主張している。
とりわけ、ステーブルコイン報酬の制限は、同社の個人向け事業に直接打撃となりかねないとして強く反対している。さらに、トークン化株式の事実上の禁止やDeFi関連規定の強化についても、イノベーションを阻害し、大規模プラットフォームの規制リスクを高める可能性があると警告した。
Coinbaseは「問題のある条項が多すぎ、現状の法案は支持できない」との立場を示している。
これに対し、Rippleは異なる見方を取る。Rippleは過去1年間、規制に沿ったインフラ整備や、規制下にある決済ネットワーク、コンプライアンス重視の戦略へと軸足を移してきた。このため、同社にとっては規制の厳しさよりも、ルールの明確さそのものが重要になる。
明確な規制枠組みが整えば、銀行や決済事業者、機関投資家がXRPやRippleNet、RippleのステーブルコインRLUSDを採用する際のハードルが下がる可能性がある。上院修正案がステーブルコインを収益商品ではなく決済手段として位置付けた点も、決済中心の戦略を進めるRippleには追い風になり得るとの見方がある。
DeFi規制の強化も、Rippleにとっては相対的に負担が小さいとされる。オープンなDeFiエコシステムへの関与が限定的で、企業や機関投資家との提携に注力しているため、コンプライアンス重視の流れが強まるほど競争環境が有利になる可能性があるためだ。
SECとCFTCの監督権限を巡っても、両社の利害は一致しない。Coinbaseは一貫してCFTC主導の監督体制を後押ししてきたが、Rippleは長年続いたSECとの訴訟を解決した後、どの当局が所管するかよりも、ルールの予見可能性を重視しているという。
業界内では今回の論争について、構図が「暗号資産業界対規制当局」から「暗号資産企業同士の利害対立」へ移りつつあるとの見方が出ている。CLARITY法案を巡る対立は、規制の明確化がすべての企業に同じ意味を持つわけではないことを示している。