米国によるイラン攻撃を受けて中東の地政学リスクが高まり、韓国産業界に警戒感が広がっている。ホルムズ海峡の封鎖懸念を背景に国際原油価格が上昇しており、中東産エネルギーへの依存度が高い韓国では、電力料金の上昇や製造コストの増加を通じて産業全般に影響が及ぶ可能性がある。
2022年のロシア・ウクライナ戦争後、欧州がエネルギー不足に直面したように、今回の事態が長引けば、韓国経済への打撃も大きくなりかねないとの見方が出ている。景気回復をけん引してきた半導体から、再編途上にある石油化学まで、幅広い業種への悪影響が懸念されている。
産業界によると、ホルムズ海峡は世界の石油輸送量の約2〜3割が通過する要衝で、韓国のエネルギー輸送でも大動脈と位置付けられている。韓国は前年比ベースで原油輸入の約7割を中東に依存しており、このうち95%以上がホルムズ海峡を通過した。
日本の中東産原油依存度も9割前後、台湾も7〜8割に達しており、アジア全体が中東に大きく依存する構図にある。このため、ホルムズ海峡が実際に封鎖されれば、韓国を含むアジア各国への打撃は大きいとの見方が強い。
欧州がロシア産ガス依存で危機に陥ったのと同様に、アジアも中東産原油への依存構造ゆえに深刻な困難に直面し得るとの指摘もある。地理的に代替輸送路の確保が容易ではないうえ、原油は長期契約の比率が高く、調達先の切り替えにも時間を要するためだ。
韓国は中長期的に調達先の多角化を進めているが、韓国石油公社の集計によると、今年1月時点でも原油輸入に占める中東産の比率は71%だった。米州産は23%、アジアは4%、アフリカは2%にとどまった。
こうした中、国際原油価格は上昇基調を強めている。ICE先物取引所では前日、5月渡しブレント先物が前営業日比6.7%高の1バレル77.74ドルで取引を終えた。ニューヨーク・マーカンタイル取引所でも、4月渡しWTI先物が6.3%高の1バレル71.23ドルとなった。
事態が早期に収束しなければ、原油価格が1バレル100ドルを突破するとの観測も広がっている。原油高はエネルギーコストの上昇につながり、電力料金の引き上げ圧力を再び強める可能性がある。
産業用電力料金は、ロシア・ウクライナ戦争後の燃料費急騰を受けて計7回、約70%引き上げられた。国際原油価格が60ドル台前半で安定し、電力料金の引き下げを求める声も出ていたが、今回の情勢を受けて再値上げへの警戒が強まっている。
産業界全体の負担が増す中、製造原価に占める電力料金の比率が高い半導体、鉄鋼、石油化学、ディスプレーなどでは、収益性の悪化が懸念される。Samsung ElectronicsやSK hynixなど半導体各社は、人工知能(AI)需要の拡大を背景に増産を進めており、電力使用量の増加に伴うコスト負担も一段と重くなる見通しだ。
中国勢の供給過剰と世界需要の低迷で再編を進めている石油化学業界も、電力料金の追加負担により市況回復が一段と難しくなるとみられている。需要が弱いため、原油高を製品価格に転嫁しにくい点も重荷だ。
製油業界では、短期的には精製マージンの改善で収益性が高まるとの見方がある一方、原油高が長期化すれば、国内需要の低迷などの影響は避けられないとみられている。
国内のガソリンスタンド価格がすでに上昇基調にあることも、こうした懸念を裏付けている。10週連続で下落していた燃料価格は、今回の事態を前に先週まで2週連続で上昇した。
大韓石油協会の関係者は「国内のガソリンスタンド価格には通常2〜3週のタイムラグがある」としたうえで、価格上昇のペースがさらに速まる可能性があると述べた。同協会は、原油高騰が続けば、自動車の利用や旅行需要の減少につながる可能性もあるとみている。
今回の事態を機に、各国がエネルギー安全保障の強化に動き、石油製品の備蓄拡大や輸出統制を進める可能性もある。この場合、中長期的に需給がさらに逼迫する恐れがある。
韓国投資証券のイ・チュンジェ研究員は「エネルギーは国家経済と社会を支える基盤であり、エネルギー価格の上昇は消費と投資の縮小につながる」と指摘した。そのうえで「長期化すれば、ロシア・ウクライナ戦争時に欧州が経験したエネルギー不足を、アジアや欧州の国々が再び経験するリスクがある」と述べた。
[聯合ニュース]