【バルセロナ(スペイン)=イ・ジノ】SK Telecomは、インフラからAIモデル、サービスまでを一体で手掛ける「フルスタックAI」戦略を本格化する。グループ各社の事業基盤を生かしてAIデータセンターを一貫構築するほか、自社AIモデル「A.X K-1」の高度化、AIエージェント「A.X」の課金モデル導入も視野に入れる。
チョン・ソクグン最高技術責任者(CTO)兼AI CIC長は、スペイン・バルセロナで開催されたMWC26の会場で取材に応じ、「AIで何ができるかを模索する段階は過ぎた。コーディングエージェント、ハードウェア、データセンターで大きな転換が起きている」と述べた。
同氏は「過去20年の変化よりも、この3年の変化の方が大きい」との認識も示した。その上で、「発電所、データセンターの建屋、サーバー、チップ、ソフトウェアまで含め、すべてをどう最適化するかという議論を進めている」と説明した。
◆グループ総力でAIデータセンターを一貫構築
SK Telecomは、グループ各社の強みを組み合わせることで、AI事業に必要な領域を幅広くカバーできるとみている。中でも、SK hynixの半導体、SK Innovationのエネルギー、SK ecoplantの建設、SK Broadbandの固定通信技術を組み合わせたAIデータセンターは、同社が強みを持つ分野と位置付ける。
チョンCTOは、AIデータセンター市場について、超大型のハイパースケール型と地域分散型のローカルエッジ型への二極化が進むとの見方を示した。SK Telecomは通信事業者として、大規模データセンターの構築力に加え、基地局運用に近いエッジデータセンターの運営ノウハウも持つため、両分野の需要を取り込めるとみる。
同氏は「韓国で、このポートフォリオでエンドツーエンドを実現できる企業を見つけるのは難しい」としたうえで、「グローバルで見れば、Google、Amazon、Microsoftなどのビッグテックに近い構造だ」と語った。
さらに「データセンターは超大型ハイパースケールとローカルエッジに二極化していくと思う」とし、「通信事業者は大規模データセンターに対応できる一方、エッジデータセンターでは基地局運用に近い強みを持つ。両方のバランスを取れる」と強調した。
◆「A.X K-1」を高度化、産業活用を重視
政府が進める「独自人工知能ファウンデーションモデル」プロジェクトにも言及した。SK Telecomは「A.X K-1」で同プロジェクト第2段階の評価に進んでいるという。
A.X K-1は、同社が国内最大規模とする5190億パラメーターのモデルで、既存の大規模言語モデル(LLM)を超え、マルチモーダル対応へ進化させる方針だ。チョンCTOは、今後さまざまな産業分野で活用余地が大きいとみており、「まず大規模モデルを構築し、その上で各ドメイン別に細分化して最適化するのが最善の戦略だ」と述べた。
そのうえで「モデルに最適化したインフラまで含めて設計し、フルスタック戦略を展開している」と説明した。
AIエージェント「A.X」については、年内にも課金モデルを導入する見通しだ。利用者は1000万人超の規模に上るといい、SK TelecomはA.X内のキラーサービスを軸に、サブスクリプションやバンドル商品の形での収益化を検討している。
チョンCTOは「まずは、顧客が喜んで料金を払って使うユースケースを見つけることが先だ。検討を続けている」と話した。
一方、6GがAI時代の中核インフラになるとの見方には慎重な姿勢を示した。MWCの基調講演に登壇したQualcommは、AI時代を完成させる要素として6Gを挙げ、高速通信がデータのアップリンク需要を吸収し、サービスの安定性を高めると説明した。
これに対し、チョンCTOは「尖った活用事例は、まだないというのが率直な考えだ」と述べ、「そうしたユースケースを懸命に探すのが通信事業者の役割だ」と語った。
また、AI CIC長とCTOを兼務する理由については、「技術と事業のバランスのためだ」と説明した。「結局のところ、当社のAI事業は技術を事業化することに尽きる。収益は、稼ごうとして得られるものではなく、技術を事業化する過程で生まれるものだ」と述べた。
そのうえで「技術も事業も理解しなければならない。AI技術を深く掘り下げ、差別化された事業モデルをつくる努力を続ける」と付け加えた。