米国とイランの軍事的緊張を背景に、暗号資産市場で値動きが荒くなっている。ビットコインはリスク資産として売られる場面があった一方で、FRBの早期利下げ観測が中長期では追い風になるとの見方も浮上。原油高や米国の規制整備の停滞、イーサリアムの技術刷新なども相場材料として意識されている。
中東情勢の悪化は原油価格を押し上げ、マクロ環境の不確実性を強めている。ビットコインは一時6万ドル台前半まで下落し、地政学リスク局面では依然としてリスク資産として扱われやすい構図が改めて示された。
その一方で、BitMEX創業者のアーサー・ヘイズ氏は、米国とイランの武力衝突がFRBによる利下げ前倒しの材料になり得ると指摘した。戦争に伴う景気減速懸念が流動性供給を促し、ドル価値の低下に備える資金がビットコインに向かう可能性があるという。地政学リスク下でビットコインが逃避先の一つとして見直されるとの見方も出ている。
米国とイスラエルによるイラン空爆後、暗号資産コミュニティでは「第三次世界大戦」への懸念が急速に広がった。ただ、市場は全面的な混乱には陥っておらず、投資家は極端なパニック売りを避けているとの分析が目立つ。短期保有者の間でも、ひとまず様子見姿勢が続いているようだ。
ホルムズ海峡の封鎖懸念を受けた原油急騰も、暗号資産市場の重荷となっている。原油高はインフレ圧力を通じて利上げ観測を強めやすく、ビットコインなどリスク資産には逆風となるためだ。もっとも、過去の値動きでは原油急騰局面でビットコインが短期的に下落した後、長期では持ち直す傾向があるとの見方もある。
中東情勢の緊迫化で世界株式市場と暗号資産市場が冷え込む中、分散型デリバティブ取引所Hyperliquid関連トークンは13%上昇した。中央集権型金融インフラの停止リスクを避ける形で、検閲耐性を持つ分散型取引基盤に資金が向かった可能性がある。戦争リスク下でも、一部のDeFi需要は底堅いとの見方につながっている。
金価格に対するビットコインの相対価値が歴史的な低水準に近づいているとして、ビットコインの底打ちを予想する声もある。金が上昇基調を強める一方、ビットコインが調整したことで、両者の価格差が大きく広がったためだ。ビットコインが割安圏にあるとの前提で、資金配分の見直しが進めば買い戻しが入りやすいとの分析も出ている。
需給面では、米国の確定拠出年金である401k市場からビットコインに資金が流入する可能性も材料視されている。約1京4000兆ウォン規模とされる資金の一部が流入候補として意識されており、大手資産運用会社が年金ポートフォリオの基本選択肢としてビットコイン現物ETFの採用を進めているという。退職資金は長期資金になりやすく、流入が本格化すれば市場の変動性低下につながるとの見方もある。
XRPを巡っては強気の見通しが相次いでいる。人工知能モデルが2026年の高値として8ドルを示したとの話題に加え、2026年5月までに5000%超上昇するといった極端な予測も出ている。DeFi市場へのXRP流入が進み、送金用途を超えた金融プラットフォームへ進化するとの期待が背景にある。
対話型AIを提供する3社に見通しを尋ねたところ、規制を巡る不透明感が後退し、決済ネットワークのエコシステムが広がれば、XRPは長期的に上昇基調を描く可能性があるとの回答が共通したという。感情に左右されにくい機械的な予測として、市場参加者の関心を集めている。
テクニカル分析では、XRPの次の主要なレジスタンスとして27ドルを挙げる声もある。過去に2023%上昇した局面が再現されるとの期待が背景にあり、当時に近い流動性環境が整えば大幅高もあり得るとの楽観論につながっている。
制度面では、米国の暗号資産法案「Clarity Act」を巡る先行き不透明感が市場の重荷となっている。法案処理が期限を迎えても進まず、3000億ドル(約45兆円)規模に拡大したステーブルコイン市場の主導権争いだけが先行している構図だ。日本では大手銀行を軸に円連動型コインの発行が進み、PayPalはアプリ内専用コインで日常決済市場を狙う動きを見せている。
Clarity Actは、米国の暗号資産市場構造を再編する法案と位置付けられているが、ステーブルコイン発行体への規制権限を巡って与野党の対立が続いている。最終的な監督権限を中央銀行と州政府のどちらが担うのか、担保資産の基準をどう設計するのかで折り合えず、不確実性が強まっている。
米証券取引委員会(SEC)は、これまでの強硬姿勢をやや和らげ、暗号資産規制の方向転換を示唆した。取り締まりと訴訟に偏った政策が、イノベーション企業の海外流出を招いたとの反省を一部認めた格好で、市場では執行偏重から明確なルール整備へ軸足が移るとの観測も出ている。
ただ、Clarity Actの停滞で規制の空白が長引く可能性も残る。明確なルールを待ち望んできた機関投資家やブロックチェーン企業にとっては失望材料であり、投資心理の悪化につながっている。法整備が遅れるほど、世界的な主導権争いで米国が出遅れるとの危機感も強まっている。
ステーブルコイン市場は3000億ドル規模まで拡大し、暗号資産取引所の基軸通貨にとどまらず、実体経済への浸透が進んでいる。新興国では自国通貨インフレへの防衛手段として、また越境貿易の決済や国際送金ネットワークでも利用が広がっている。市場では、ステーブルコインが日常的な金融インフラとして定着しつつあるとの見方が広がる。
2026年の主要トレンドとしては、保有によって利回りを生む「Yield-bearing」、複数のメインネットをまたぐ相互運用性、条件に応じて決済を自動実行するプログラマビリティが挙げられている。単なるドル連動だけでは不十分で、次世代金融サービスの基盤となる機能を備えたプラットフォームが優位に立つとの分析だ。
イーサリアムを巡っては、ロールアップ技術の統合や機関投資家の参入拡大を背景に、再評価の動きが出ている。レイヤー2で分散していた流動性が再び集まりつつあり、RWA(実物資産のトークン化)プロジェクトがイーサリアムを優先採用するケースも増えている。スマートコントラクト基盤としての優位性を改めて強めているとの見方もある。
イーサリアム創設者のビタリック・ブテリン氏は、新標準「EIP-8141」の導入によって、暗号資産ウォレットの利便性と安全性を高める方針を示した。シードフレーズの紛失による恒久的な資産消失リスクを減らし、スマートコントラクト機能をウォレットに組み込むことで、初心者でも銀行アプリのような感覚でWeb3を利用しやすくする狙いがあるという。
ブテリン氏は今後4年以内にブロック生成時間を2秒未満に短縮し、量子コンピューターによる攻撃に備える暗号技術を導入するロードマップも示した。Solanaなど高速ブロックチェーンの追い上げを意識しつつ、分散性を維持しながら性能を高める方針だ。
市場全体では、白書と期待先行で資金を集めた「投機の時代」が終わり、プロジェクトの実態を厳しく見極める局面に入ったとの指摘もある。十分な収益を生み出せない、あるいは有意なアクティブユーザー基盤を構築できない案件では、上場廃止や淘汰が進んでいるという。技術力と持続可能な事業モデルを備えたプロジェクトを選別する流れが強まっている。
ミームコインのシバイヌについては、0.00001ドルの節目を超えられるかが注目点となっている。5000万枚を保有した場合の潜在収益を試算する見方もある一方、焼却率の上昇やエコシステム拡大で投機需要は残るものの、時価総額の大きさを踏まえると、過去のような急騰を再現するのは容易ではないとの分析も出ている。
予測市場プラットフォームのPolymarketでは、イラン空爆の時期を正確に予測して100万ドル(約1億5000万円)を得たウォレットが現れ、インサイダー取引疑惑が広がっている。軍事機密が投機対象になることへの倫理的批判に加え、先回りした情報を持つ勢力が市場をかく乱し得るという副作用も浮き彫りになった。