人工知能(AI)を活用したショッピングを支えるプロトコルの整備が進んでいる。A2A、MCP、UCPといった役割の異なる仕様が出そろい、AIショッピングのエコシステムが具体化し始めた。
これらは互いに競合するものではなく、役割を分担して機能する。例えば利用者がAIチャットボットに「白いランニングシューズを探して」と依頼すると、チャットボットは複数のECモール側のAIに在庫や商品情報を問い合わせる。このAIエージェント同士の連携を担うのが、Agent-to-Agent Protocol(A2A)だ。
A2AはGoogleが2025年4月に発表した。AIエージェント同士がやり取りするための共通言語に当たる仕様で、公開後はLinux Foundationに技術を提供し、150社以上が参加するオープン標準になった。
A2Aが登場する以前は、Gemini、ChatGPT、Llamaなど異なるAIエージェント同士を連携させるには、個別の専用コードが必要だった。A2Aを実装すれば、対応するエージェント間で直接やり取りでき、実装の複雑さを抑えられるという。
一方、問い合わせを受けたECモール側のAIは、自社データベースから白いランニングシューズを探さなければならない。この部分を支えるのがModel Context Protocol(MCP)である。A2AがAI同士をつなぐ仕様であるのに対し、MCPはAIが各種ツールやデータにアクセスするためのプロトコルで、Anthropicが2024年11月に発表した。
MCPの特徴は再利用しやすさにある。AnthropicはGoogle Drive、Slack、GitHubなど主要システム向けのMCPサーバを提供しており、AIモデルを入れ替えても使い回せるとしている。開発者リレーションズ統括のアレックス・アルバート氏は、「MCPはAIエージェント時代のUSB-Cポートになる」と述べた。
AIショッピングを定着させるには、商品情報そのものの標準化も欠かせない。この文脈で注目されているのが、1月にGoogle主導で発表されたUniversal Commerce Protocol(UCP)だ。
海外メディアでは、UCPをHTTPになぞらえる見方も出ている。1990年代にHTTPがWebの標準となってインターネットの成長を支えたように、UCPは商品発見からカート管理、決済、配送、アフターサービスまで、ショッピング全般に関わる情報を定義する。
UCPでは、動的交渉(Dynamic Negotiation)によって、カート金額や購入者の地域といった条件に応じて決済手段を自動調整できる。例えば韓国ではKakaoPay、米国ではApple Payを提案するといった対応が可能になる。さらに、Kurlyでは4万ウォン以上で送料無料、Naver Shoppingではストアごとの配送ポリシーを適用するといった運用も想定する。
こうした仕組みでも、主導権は販売者側に残る。Googleは、AIとECモールをつなぐプラットフォームのみを提供し、顧客データや取引履歴は販売者が直接管理するとしている。
AIショッピング向けプロトコルは、企業間の協力を通じて進化している。A2AにはGoogle、Microsoft、Adobeなど150社以上が参加する。UCPはGoogleとShopifyが共同開発し、Walmart、Target、Visaなど20社以上が支持している。AIショッピングの拡大には、エコシステムの構築が前提になるという業界の利害が一致した結果とみられる。
Shopifyのハーレイ・フィンケルスタイン氏は、「商取引の未来が、一部の巨大プラットフォームがすべてを支配する閉鎖的な仕組みであってはならない」と指摘した。その上で、「オープン標準は、規模を問わずすべての販売者が自社ブランドを維持したまま、AIという新たな波に乗るための最も強力な武器になる」と述べた。