米国で、出来事の結果を売買する「予測市場(prediction markets)」が急速に存在感を高めている。PolymarketやKalshiといった主要プラットフォームでは、選挙やスポーツの勝敗に加え、エンターテインメント分野まで対象が広がっている。大手メディアとの提携も進み、予測市場のデータが一般読者の目に触れる機会は増えている。一方で、ギャンブル化やインサイダー取引を巡る懸念もくすぶる。
予測市場は、かつては一部の政治マニアを中心に利用されていたが、いまでは米国の政治や文化を横断するプラットフォームへと成長した。PolymarketやKalshiでは、スポーツの勝敗や選挙結果から、歌手テイラー・スウィフトの結婚時期まで、幅広いテーマで取引が行われている。
利用者でなくても、関連データに接する場面は増えている。CNN、CNBC、The Wall Street Journal(WSJ)などの有力メディアが予測市場プラットフォームと提携し、ニュース報道にそのデータを取り込み始めたためだ。
予測市場は、政治に関する賭けが増えた2010年代から広がり始めたものの、長らく一部利用者にとどまっていた。転機となったのは2024年の米大統領選だ。これを機に一気に主流化が進み、Polymarketの知名度も大きく高まった。
2020年設立のPolymarketは大統領選を巡るオッズを示し、トランプ候補が従来の世論調査より優勢だとする見方を映し出した。米New York Timesによると、トランプ氏は自身のソーシャルメディア「Truth Social」でこれを大々的に取り上げ、勝利確率64%を示すグラフィックも共有した。
取引規模も急拡大している。投資銀行Piper Sandlerによると、KalshiとPolymarketの取引額は昨年12月だけで120億ドルに達し、前年同月比で400%超増えた。
この流れを受け、各社の企業価値評価も上昇している。昨年、KalshiとPolymarketはそれぞれ110億ドル、90億ドルの評価額で資金を調達した。
New York Timesによれば、予測市場は従来のスポーツベッティングとは異なる仕組みで運営される。「2027年までにイラン政権は崩壊するか」「連邦最高裁はトランプ氏の関税政策を支持する判断を示すか」といった、二者択一で判定できる設問が並ぶ。
利用者はプラットフォーム上で「契約」を購入し、任意の金額を投じる。契約価格は0~1ドルの間で変動し、その価格自体が市場参加者の見込む発生確率を映す。例えば0.20ドルなら20%、0.90ドルなら90%を意味する。実際に結果が成立し、予測が的中した側の契約は1ドルの価値となる。0.1ドルで100契約を購入した場合、受取額は100ドルになる。
スポーツベッティング事業者と異なり、予測市場は賭けの反対側に立つ胴元ではない。New York Timesによると、買い手同士をマッチングし、取引手数料を徴収して収益を得るモデルだという。
ただ、成長に伴って懸念も強まっている。New York Timesによれば、米国では長年にわたりスポーツベッティングの大半が禁止されていたが、2018年に連邦最高裁が違憲判断を示したことで規制緩和が進んだ。
予測市場プラットフォームも、市場操作やインサイダー取引の疑いと無縁ではない。議会関係者らを含む批判派からは、未公表情報を持つ人物が予測市場を通じて利益を得る可能性があるとの指摘が続いている。
実例として挙げられるのが、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を米軍が拘束する数時間前の取引だ。Polymarketの匿名ユーザーがマドゥロ氏の退陣に数万ドルを賭け、政府関係者が軍事計画に関する機密情報を使ったのではないかとの憶測が広がった。当該ユーザーは41万ドルを得たと、New York Timesは報じている。
これに対し、予測市場の支持派は、PolymarketやKalshiは賭博とは本質的に異なると反論する。世界の出来事に関する見通しを価格として集約し、有用な新たな情報源を提供するという主張だ。
Kalshi共同創業者のタレク・マンスール氏は「予測市場は、情報と群衆の知恵を集約する最も効果的な方法だ。金銭が伴えば、人はより正確な予測を示す。損失を避けるには、予測を当てなければならない」と述べた。そのうえで「Kalshiはインサイダー取引を防ぐ仕組みを備えており、米国で規制を受ける取引所も運営している」と付け加えた。
懸念が強まるなかでも、予測市場各社は調達資金を成長投資に振り向けている。マーケティングも積極化しており、Kalshiはタイムズスクエアに選挙勝率予測を掲げた広告ボードを設置した。New York Timesによると、最近のゴールデングローブ賞授賞式の生中継では、Polymarketによる最優秀オリジナルソング賞などの受賞予測が紹介される場面もあった。