世界的なAI需要の拡大を背景に、車載向けメモリの供給逼迫への警戒感が強まっている。AIサーバー向けの高性能DRAM需要が急増するなか、S&P Global Mobilityは2026年に車載DRAMが不足し、価格が70〜100%上昇する可能性があると指摘した。
半導体業界では、パンデミック期に発生した車載半導体不足が再び起こるのではないかとの見方が出ている。今回はAIデータセンター向け需要の拡大が、自動車業界の調達環境を圧迫している構図だ。
21日付のInsideおよびastutegroupの分析によると、AIデータセンターの増設に伴いDRAM需要は急拡大している。2025年第3四半期時点のDRAM価格は前年同期比171.8%上昇し、金の上昇率を上回る水準となった。
HBMやサーバー向けRDIMMの需要増を受け、メモリメーカーは民生向けDDR5モジュールよりデータセンター向け部品の供給を優先している。この影響で、車載半導体、とりわけ車載DRAMの調達は一段と難しくなっている。
S&P Global Mobilityの報告書は、2026年に車載DRAMの供給不足が深刻化し、価格が70〜100%上昇する可能性があると予測した。一部メーカーでは、生産遅延や在庫確保を巡る競争が起こる恐れがあると警告している。
シリコンウエハーの供給制約に加え、AI向け高性能チップとの需要競合も重なり、自動車メーカーや部品メーカーは、従来使ってきた比較的低性能なレガシーメモリでさえ安定調達が難しくなりつつある。こうした供給圧力は、電子化の進んだ車両を手掛けるTeslaやRivianのようなメーカーに、より大きな影響を及ぼす可能性がある。
さらに、既存のメモリチップの一部は2028年までに生産終了が予定されており、OEM各社はシステムの再設計と供給確保を急いでいる。自動車メーカーは在庫管理とサプライチェーン戦略の見直しを進めており、長期契約の締結、調達先の分散、設計の柔軟性確保などを検討している。
DRAM価格の上昇と供給制約が長引けば、車両生産と価格維持の両面で大きな負担となる可能性がある。業界アナリストは、今回のDRAM不足が単なる部材不足にとどまらず、自動車メーカーの生産・調達戦略全体に影響を及ぼしかねないとみている。
高度な電子装備や自動運転機能に必要なチップ需要が増えるなか、安定したメモリ調達と価格管理はこれまで以上に重要になっている。実際、一部メーカーはSamsung ElectronicsやSK hynixと4年契約を結び、高価格帯メモリの確保を進めているという。
DRAM供給が制約されれば、高性能メモリはAIサーバー向けに集中し、PCやモバイル、組み込み機器向けに加え、車載分野にも影響が広がる可能性がある。業界では、供給網の分散、先行在庫の確保、設計最適化が今後の重要課題になるとの見方が強まっている。