低コストのLFP(リン酸鉄リチウム)電池が、2025年の世界EV電池市場で初めて主流となった。調査会社RhoMotionによると、LFP電池の需要は2025年に48%増加し、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)などのニッケル系電池を上回った。
米EVメディアのInsideEVsは20日(現地時間、1月)、RhoMotionのデータを基に、LFPが2025年に初めてニッケル系を抜き、EV向け電池の中心的な化学系になったと報じた。世界の電池市場で主流材料の構図が変わりつつあることを示している。
これまで自動車メーカーは、高いエネルギー密度を持ち、航続距離を確保しやすいNMC電池を主力としてきた。特に米国では、多くのEVがNMC電池を採用してきた。
一方で、ニッケルやコバルトの採掘に伴う高コストや環境負荷、コンゴ民主共和国を中心に指摘されてきた労働・人権問題が、ニッケル系電池の課題として重くなっていた。
こうしたなか、電池メーカーはニッケルを使わないLFPへのシフトを進めている。LFPは価格競争力が高く、サプライチェーン上のリスクも比較的小さい。
技術の進展で、NMCとのエネルギー密度の差も縮小している。昨年時点では、LFP電池が世界のEV向け電池需要の半分超を占めた。
NMC電池はなおエネルギー密度で優位にあるが、自動車メーカーは設計面の工夫で弱点を補っている。セル・トゥ・パック(Cell-to-Pack)やセル・トゥ・シャシー(Cell-to-Chassis)の採用により、同じ空間により多くのセルを搭載しやすくなった。
正極材や負極材の最適化も、性能差の縮小を後押ししている。
中国はLFP採用で圧倒的な存在感を示している。昨年1〜11月に中国で販売されたEVの80%超がLFP電池を搭載した。この優位性は海外市場にも広がっている。
欧州とアジア(中国を除く)は昨年、世界のLFP需要増加分の約75%を占めた。主因は中国EVメーカーの海外展開だ。
BloombergがDataforceの資料を引用して報じたところによると、中国の自動車メーカーは2025年11月の欧州EV市場で12.8%のシェアを獲得し、前年同月から2倍超に拡大した。BYD、Leapmotor、Cheryなどが欧州市場で急速に販売を伸ばしている。
中国最大の電池メーカーCATLはLFP市場の最大手で、昨年販売されたEVの約3台に1台がCATL製電池を搭載した。CATLとBYDは、関税負担の軽減と完成車メーカーへの供給強化を狙い、欧州での現地生産も積極化している。
両社はハンガリーで電池工場を建設中だ。CATLはドイツ工場を運営しているほか、Stellantisと協力し、スペインでの工場設立も進めている。
一方、北米は2025年にLFP電池の採用が減少した唯一の地域だった。米国では、バイデン政権のインフレ抑制法(IRA)に基づく関税や厳格な原産地規制によって、中国製電池の流入が抑えられてきた。このため、米国市場でLFP電池を搭載するEVは限られている。
Teslaはかつて米国でModel 3のベースグレードにLFP電池を採用していたが、関税負担を理由に2024年に同グレードを打ち切った。現在はRivianがR1SとR1Tのベースグレードに、FordがMustang Mach-EのベースグレードにLFP電池を採用している。
今後、Chevrolet Boltの復活や、Fordによる3万ドル台の低価格EVトラック投入が実現すれば、米国でもLFP採用が再び広がる可能性がある。3万ドルは約450万円に相当する。
もっとも、米国で今後LFP需要をけん引するのは乗用EVではなく、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)となる可能性が高い。7500ドル(約112万5000円)の連邦EV税額控除の終了後を見据え、米国内の電池メーカーは成長が速いESS市場に軸足を移しつつ、生産戦略を見直している。
Teslaは2025年第3四半期までにMegapackを2万4000台導入し、前年同期比186%の伸びを記録した。LGエナジーソリューション、Tesla、SK Onなど主要電池メーカーも、EVより成長の速いESS市場を中心に生産能力の再編を進めており、米国でのLFP採用は中長期的に増えるとの見方が出ている。