写真=SK TelecomのAIボードチーム長を務めるキム・インス氏。イチョンのSK Telecom人材開発院でAXの現状を説明した。

SK Telecomは11月1日、業務プロセスと協業体制をAI前提で再設計する「AX革新2.0」を推進すると発表した。データアクセスやシステム連携、セキュリティなど、AI導入の過程で浮上する課題を全社横断で解消し、生産性向上につなげる。

同社はこれまで、社員が自らAIエージェントを開発し、業務に活用する文化の定着を進めてきた。今回はその取り組みを、個人レベルの活用から組織全体の変革へ広げる位置付けとなる。

AX革新2.0は、「個人から組織へ、利便から実用へ」を軸に据える。AI導入の初期段階では一時的に業務効率が落ち込んだ後、体制や業務プロセスの整備を経て生産性が高まるとされる「AX Jカーブ」に着目し、その谷をどう乗り越えるかに重点を置く。

◆AIエージェント活用を全社展開、3施策でAXを後押し

SK Telecomによると、これまでにAIエージェントを作成した社員は4000人を超え、社内で定常的に利用されているAIエージェントは約1500件に上る。

同社は、個人のAI活用を組織レベルの革新へ拡大するため、「AXイネーブラーTF」「AXサンドボックス」「AXカタリスト」の3施策を運用する。

AXイネーブラーTFは、AI活用に伴って生じるデータアクセス、セキュリティ、システム連携などの課題を全社で解決するための組織だ。AIエージェントに関する社員番号制度や評価体系の導入など、制度面の整備も進める。

AXサンドボックスは、既存業務をAI前提で再設計する取り組み。上半期にはサービス開発部門で、1人の社員がAIエージェントと連携しながら、企画から開発、検証までを担う実証を実施した。下半期には対象を全社に広げ、人とAIエージェントの協業モデルを探る。

AXカタリストは、現場でAI活用を先導する社員を支援する制度。9月に選定した第1期のカタリスト10人は、自ら開発したAIエージェントや活用ノウハウを共有しながら、全社的なAI活用を阻む技術面・制度面の課題を洗い出す役割を担う。

◆機微データ保護技術を開発、AI業務活用の基盤を強化

同社は、AI活用を支えるデータセキュリティ技術の開発も進めている。AIに機微な原本データを直接渡さずに業務処理を可能にする「Z.E.Z(Zero Exposure Zone)」を開発し、特許を出願した。

個人情報などの原本データは別領域で管理し、AIにはメタデータや計算結果など、必要な処理情報だけを渡す仕組みを採る。

あわせて、AIエージェントがデータの意味を把握しやすくするための「Data Desk」も整備した。各種データの説明や業務上の文脈を自動生成し、AIが必要な情報を探索・活用できるようにする。

このほか、業務資料や目標を基に組織の業務フローを把握し、AIを適用できる業務を抽出する「Work Map」も推進する。人とAIが協働するための標準業務手順の策定につなげる方針だ。

同社関係者は、「AX Jカーブの谷を越えるため、社員とAIエージェントが共に働く業務環境を整えている」と説明。「社員の自発的なAI活用文化と全社支援体制を有機的に結び付け、AX革新の成果を組織全体に広げていく」としている。

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