写真=ITmedia

イオンは、フィジカルAIを導入した物流拠点の本格運用を始めた。商品仕分けから店舗別の積載までをロボットで自動化し、作業自動化率は50%に達する。2030年までに80%へ引き上げる方針だ。

ITmediaによると、イオンとロボット制御ソフトウェアを手がけるMujinは10月30日、埼玉県川口市の配送拠点「Aeon Kawaguchi Higashi XD」を公開した。同拠点は首都圏の小型スーパー「My Basket」約200店舗向けに商品を供給しており、同日から本格稼働に入った。

拠点には90台超のロボットを導入した。入荷したケース単位の商品をセンサーで認識してコンベヤーに載せる工程から、無人搬送車(AGV)による搬送までを自動化している。なかでも82台のAGVがバラ商品を一時保管エリアへ運び、庫内オペレーションを支える。

中核となるのが積載工程だ。店舗ごとに出荷する商品をカートラックに載せる段階では、ロボットアームが自動で積み付ける。事前に入力された指示通りに定型動作を繰り返す従来型の産業用ロボットと異なり、フィジカルAIを活用したロボットは、商品の重さや形状を踏まえて積載順序や積み方を自動で判断する。荷崩れを防ぐよう、状況に応じて動作を最適化するのが特徴という。

イオンによると、同拠点の作業自動化率は全工程の50%に達する。ロボット導入による省人化効果は1日当たり約39人分に上る。イオンの物流子会社Aeon Global SCMのヤマモト・ヒロキ社長は、ロボットの生産性について「人の3〜4倍」と説明した。

同社によると、商品仕分けから店舗別積載までを一連の流れとして自動化したのは初の事例という。今後は、入荷から出荷までの全工程を自動化する体制も検討する。2030年までに自動化率を80%へ高めるほか、同拠点を起点にグループ内のスーパーやドラッグストア向け物流施設にも自動化を広げる考えだ。

イオンが物流自動化を急ぐ背景には、日本の流通・物流業界で深刻化する人手不足がある。生産年齢人口の減少が続くなか、輸送や仕分け、積載といった労働集約型業務で人材確保が一段と難しくなっているためだ。フィジカルAIは、定型作業の自動化にとどまらず、周辺環境を認識しながら作業方法を判断できることから、従来の自動化設備では代替しにくかった現場業務への活用が期待されている。

市場の成長期待も大きい。インドの調査会社Acumen Research and Consultingは、世界のフィジカルAI市場規模が2025年の50億2120万ドルから、2035年には827億9090万ドルに拡大すると試算している。物流現場で設備投資や運用に結び付く事例が増えれば、産業用途での導入余地も広がるとの見方を示した。

日本政府もフィジカルAIを産業競争力強化に向けた戦略分野と位置付けている。タカイチ・サナエ政権は、日本が産業用ロボットや製造現場データを幅広く保有している点に着目し、フィジカルAIを戦略17分野の一つに挙げた。2040年までに約10兆5000億円規模の官民投資を進める構想だ。

一方、物流現場への本格普及には安全性の確保が前提となる。AIが作業状況を誤認したり、ロボットが誤作動したりすれば、作業者に被害が及ぶおそれがあるためだ。日本総合研究所のイワサキ・カオリ首席主任研究員は、人に危害を与えない安全装置の整備が必要だと指摘したうえで、「できる領域から始め、知見を蓄積しながら課題を解決していく必要がある」「完成形に至るまでには10年単位の時間がかかる」と述べた。

今回の取り組みは、フィジカルAIが研究開発段階を超え、流通現場の人手不足解消と生産性向上に向けた実装フェーズに入りつつあることを示す事例といえそうだ。入荷から出荷まで自動化の範囲が広がれば、日本の流通物流の現場運営にも変化をもたらす可能性がある。

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