世界最大級の暗号資産取引所Binanceから約8兆ウォン規模の暗号資産が不正流出した可能性が浮上し、暗号資産市場が急落した。ビットコインをはじめ主要銘柄が売られたほか、影響は分散型金融(DeFi)の融資市場にも広がっており、市場では流動性悪化と連鎖清算への警戒が強まっている。
ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、今回の事案ではBinanceのウォレットから大規模な資金が流出したとみられている。取引所での流出が市場参加者のリスク回避姿勢を強め、ステーブルコイン発行体による凍結措置やDeFiプロトコルの融資制限にもつながったという。
攻撃では、イーサリアム改善提案「EIP-7702」の権限委任の仕組みが悪用された可能性が指摘されている。攻撃者はBinanceのウォレットから資金を移動させ、流出資産のうちTether(USDT)やUSD Coin(USDC)など主要ステーブルコインについては、発行体が凍結措置を講じた。
一方、資金の一部はDeFi融資プロトコルのAaveに流入した。攻撃者はUSDTを担保に大量のイーサリアム(ETH)を借り入れたとみられる。Aaveはリスク拡大を抑えるため、新規の預け入れと借り入れを一時停止した。
盗難資金が分散型取引所(DEX)などを通じて大量のETHに交換された点も懸念材料となっている。CoinPostは、この過程で一部市場のETH価格が一時的に押し上げられた可能性があると伝えた。異常な大口資金の移動が需給や価格形成をゆがめかねないとの見方が出ている。
売り圧力は、事故が起きたBinanceに最も強く集中した。BybitやOKX、HTXなど他の主要取引所でも一時的に売りが広がったが、その後はやや落ち着きを取り戻した。一方のBinanceでは、セキュリティ事故に伴う取引リスクが意識され、資金流出が目立ったほか、デリバティブ市場でも主要銘柄が総じて下落した。
特にアルトコインでは、オープンインタレスト(OI)が10%超減少した銘柄が複数確認された。OIの急減は、投資家がポジション整理を急ぎ、市場リスクを圧縮する動きが加速したことを示している。
市場では価格下落に加え、流動性収縮が長引く可能性にも注目が集まっている。報告書は、今回の事案が暗号資産市場全体の流動性低下につながったと分析した。板が薄い局面では小口の売買でも値動きが大きくなりやすく、レバレッジポジションの清算リスクも残るため、追加の急変動や連鎖的な強制清算が起きる可能性があるとしている。
大手中央集権型取引所での資金流出事例も改めて注目されている。2025年2月21日にはBybitで約15億ドル(約2250億円)、2026年9月24日にはBitgetで約3億5000万ドル(約525億円)規模の流出事故が発生した。今回のBinanceの流出推計額は、これらを大きく上回る水準だという。報告書は、過去にも大手取引所の事故後にリスク回避が強まり、市場流動性が低下する現象が繰り返されてきたと指摘した。
DeFi市場へのショックがどこまで広がるかも重要な焦点だ。現時点でAaveの借り手に直接的な損失が生じたとの報告はないが、新規の預け入れや借り入れの制限が長引けば、融資市場の流動性低下や資金調達コストの上昇を招く可能性がある。中央集権型取引所のセキュリティ事故が、ステーブルコインの凍結やDeFiの担保・融資構造を通じて、分散型金融市場全体の信用不安に発展するとの懸念も出ている。
今回の事案は、単なる取引所のセキュリティ事故にとどまらず、暗号資産市場の流動性と信認を試す局面に発展しつつある。資金移動や取引制限がいつ正常化するのかが、市場安定を見極めるうえで当面の焦点となりそうだ。