米CFTCのマイケル・セルリック委員は、AIエージェントの普及を踏まえた金融規制の見直しが必要だと訴えた。写真はイメージ=Shutterstock

米商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セルリック委員は、自律型AIエージェントが資産を保有し、自ら売買を執行する時代を見据え、金融規制の枠組みを見直す必要があるとの考えを示した。責任の所在や新たな確認制度、高速化する自動取引への監視体制が主な論点になるという。

ブロックチェーンメディアのCointelegraphが29日(現地時間)に報じた。セルリック委員はワシントンで開かれた初の「フロンティア・フォーラム」で、現行の規制は人間のトレーダーを前提としているが、今後はAIエージェントが独立して金融行動を取るケースも想定しなければならないと述べた。

同委員は例として、冷蔵庫がイーサリアムのステーキングで得た収益を使って食品を自動購入したり、自らミームコインを発行したりする場面も想定し得ると説明した。そのうえで、規制当局にはこうした行為をどう監督するのかが問われると指摘した。

「私たちは金融市場を急速に変えつつある技術を議論するために集まった。これは印刷機、蒸気機関、インターネットと同じくらい現実的な技術だ」とも語った。

最大の論点の一つは責任の所在だ。セルリック委員は、AIエージェントが制御不能に陥った場合に誰が責任を負うのかが問題になると指摘。あわせて、複数のエージェントが誰の代理で取引しているのかを規制当局が把握するには、従来の顧客確認とは別に「エージェント確認」とも言える仕組みが必要になる可能性があるとした。

AI活用を巡っては、利便性への期待とリスクへの警戒が交錯している。セルリック委員は、AIによってこれまで大手機関に限られていたリスク管理機能を個人投資家や中小企業にも提供できる可能性がある一方、自律性が高まるほど想定外の市場反応を招く恐れもあると警鐘を鳴らした。

同種のモデルを使うエージェントが同じ方向の判断を下せば、取引が一方向に偏る可能性がある。さらに、超高速の自動取引は市場監視とリスク管理を一段と難しくするとも述べた。

こうした懸念は、他の当局や業界関係者からも上がっている。イングランド銀行の金融政策委員会は昨年、類似モデルの広範な利用によって市場ショックが増幅される可能性があると警告した。Animoca Brandsのヤット・シウ会長も、多くの利用者が同じ取引内容をAIに尋ねれば、似通った回答が返ってくる恐れがあると指摘している。

暗号資産取引のインフラでは、AIを用いた自律型ツールの導入が進む。Coinbaseは2月、利用者が設定した上限の範囲内で、AIエージェントが支払いと取引を実行できる「エージェンティック・ウォレット」を公開した。Binanceも3月、AIエージェント向け機能を導入し、市場データの提供や現物注文の発注・管理を支援し始めた。

若年層の投資家を中心にAI受容が進んでいることも、規制議論を前倒しする要因とみられている。eToroが9月に公表した調査では、米国のミレニアル世代の投資家の79%、Z世代の投資家の77%が、投資先の選定やポートフォリオ調整にAIをすでに利用している、もしくは利用意向があると回答した。

こうした動きを受け、金融サービス全般の自動化に適用する規制基準は、個人投資家保護と市場の安定性に直接影響する度合いを強めている。

今回の問題提起は暗号資産市場にとどまらない。資産保有、注文執行、リスク管理の担い手がAIエージェントへ移るほど、規制当局には登録対象、責任の帰属、監視手法、確認手続きを改めて定義し直すことが求められる。

AIが金融参加者を補助するツールの域を超え、独立した行為主体に近づくにつれて、関連する規制論議は今後さらに本格化しそうだ。

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