米CNBCは10月29日(現地時間)、ジム・クレーマー氏が足元のハイテク株安について、一部企業の決算失速が同業他社全体の弱材料と受け止められ、競争力の高い企業まで売られていると指摘したと報じた。企業ごとの業績や事業特性を精査すれば、こうした連想売りは投資機会になり得るという。
同日(29日)のニューヨーク株式市場では、主要3指数がそろって反落した。ダウ工業株30種平均とS&P500種指数はともに0.4%安、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は1.4%下落した。
決算発表が相次ぐなか、クレーマー氏は、業績が振るわなかった企業だけでなく、同業の競合企業まで一律に売られている点を問題視した。
同氏は「自分で調べて、その企業が実際に何をしているのかを理解することが大切だ」と述べた。その上で、短期的な連想売りに巻き込まれた銘柄の中に収益機会を見いだせるとの考えを示した。
こうした動きは、時間の経過とともに修正されることが多いとも説明した。業界内の1社の不振が競合他社の株価まで押し下げても、最終的には個社の実力差が反映されるという見方だ。
具体例として挙げたのがサイバーセキュリティ業界だ。Fortinetが28日に発表した四半期決算が市場予想を下回ったことを受け、Palo Alto NetworksやCrowdStrikeにも売りが波及した。
ただ、クレーマー氏は3社の事業内容は同一ではないとみる。Fortinetがハードウェア色の強い事業構成であるのに対し、Palo Alto NetworksとCrowdStrikeは、より幅広いサイバーセキュリティのプラットフォームやサービスを展開していると指摘した。
さらに、Fortinetはこの2社に市場シェアを奪われているとの見方も示した。Fortinetの不振をサイバーセキュリティ需要全体の鈍化とみるのではなく、個社の競争力の問題として捉えるべきだという。
同氏は「これらの株は売るのではなく、むしろ買うべきだ」と主張した。「Fortinetの弱さはサイバーセキュリティ市場の減速を意味するのではなく、Fortinet自身がうまく機能していないことを示しているにすぎない」と語った。
同様の動きはエンタープライズソフトウェアでもみられた。ServiceNowが28日の決算発表で市場の期待に届かなかった後、WorkdayやSalesforceなどSaaS関連銘柄も軟調に推移したという。
クレーマー氏は、これらの企業も事業領域や競争力を切り分けて評価すべきだと強調した。Workdayは人事・財務ソフトに、Salesforceは顧客関係管理(CRM)ツールとAgentforceプラットフォームにそれぞれ強みを持っており、ServiceNowの決算だけで同じ見通しを当てはめるのは適切ではないとした。
同氏は、この日のWorkdayとSalesforceの下落について、会社固有の問題というよりも、ServiceNowの決算を受けたセンチメント悪化の影響が大きかったと評価した。同じ業種という理由で株価が連動したものの、各社の事業構造や業績の違いは十分に織り込まれていないとの見方だ。
こうした同調的な売りは、ほかのハイテク分野にも広がった。Alphabetが28日の引け後に発表した決算が市場予想を下回ると、好調な四半期業績を示したMicrosoftの株価にも売り圧力が及んだという。
半導体分野では、サムスン電子が29日に示した慎重な見通しがMicron株の重荷になったとした。ただ、クレーマー氏は、Micronの高帯域幅メモリ(HBM)の受注動向はサムスン電子よりはるかに強いと評価している。
そのため、両社を同じ物差しで一括して売るのは妥当ではないとの見方を示した。
クレーマー氏は、こうした一律の売りの中には「ばかげていると言っていいものもある」と述べた。決算シーズンの値動きでハイテク株全体が揺れている局面だからこそ、業界全体をひとくくりにするのではなく、個別企業の業績と競争力を見極める必要があるという。
同氏の発言は、ハイテク株の調整局面で投資家が何を基準に判断すべきかを示している。1社の業績不振が競合他社に波及することはあっても、事業見通しや収益力の異なる企業まで一律に売られれば、そこに投資機会が生まれる可能性がある。