Ethereum共同創業者のビタリック・ブテリン氏は29日、AIは膨大な知識を参照できる一方で、文書の論点や文意を正確に読み取る力には限界があるとの認識を示した。特に、初見の文書や暗号資産関連の監査資料では、AIによる要約だけに頼ると欠陥を見落とすおそれがあると警鐘を鳴らした。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanによると、ブテリン氏は同日、X(旧Twitter)への投稿で、AIは「ほぼあらゆる事柄について参照先を見つけられるほど博識だ」が、「文章が実際に何を主張しているのかについては、最も表層的な判断にとどまりがちだ」と述べた。
こうした弱点は、既によく知られた内容を扱う文書よりも、初見の文書でより鮮明に表れるという。なじみのあるテーマであれば、AIモデルは蓄積された資料を手掛かりに文脈を補えるが、新しい文書では参照できる情報が乏しい。このため、本文そのものの読解力がより厳しく問われることになる。
この指摘は、暗号資産分野の実務にも通じる。ホワイトペーパーやスマートコントラクトの監査報告書、ガバナンス提案書など、新規文書の解釈が重要な場面でAIによる要約のみに依拠すると、微細な欠陥や重要な論点を見落としかねない。ブテリン氏が問題視したのは、こうした「表面的な読み取り」のリスクだ。
ブテリン氏は足元、AIが暗号資産のセキュリティに及ぼす影響についても繰り返し発言している。AIが2年以内に暗号資産の中核的な防御体制の一部を弱体化させる可能性があると警告し、最終判断に人間が関与するツールの必要性を訴えてきた。AIとの対話に「パラノイアモード」を導入する案や、以前提案した「Compute Winter Button」構想も、こうした問題意識の延長線上にあるという。
一方で、ブテリン氏はAIそのものを否定的に評価しているわけではない。7月には、AIは人間のあらゆる能力を一度に置き換えるのではなく、能力ごとに段階的に先行しているとの見方を示した。同月には、匿名で作成したEthereum関連文書の作成者を特定する実験で、AIツールが自身の文体を識別したことにも触れている。
今回の発言は、AIの活用範囲と限界を冷静に見極める必要があるとのメッセージといえる。とりわけ、原文を十分に確認せずAI要約に依存しがちな開発チームやトレーダーにとっては示唆が大きい。数学など一部の分野では、AIがすでに最上位層の人間を上回るとの見方もある中、AIの実力と限界を巡る議論は今後も続きそうだ。
ブテリン氏はXへの投稿で、AIの「博識さ」は分かりやすい一方、「賢明さ」の限界は見えにくいとも指摘した。その上で、こうした差は、学習データに含まれる文書を分析する場合よりも、初見の文書を扱う場合により顕著になると説明している。