Samsung ElectronicsのDS(半導体)部門とDX(デバイスエクスペリエンス)部門を率いるトップが、創立57周年の記念メッセージでそろって「根源的競争力」の強化を訴えた。AI需要はDS部門には業績改善の追い風となる一方、DX部門には半導体価格上昇というコスト負担をもたらしている。両部門は、市況に左右されにくい事業体制の必要性を改めて示し、技術と品質という基本の徹底を打ち出した。
Samsung Electronicsは10月30日、創立57周年に合わせてDS、DX両部門の記念メッセージを公表した。記念式典は開かなかった。DS部門を率いるチョン・ヨンヒョン代表取締役副会長は、過去最大の実績を上げた社員に謝意を示した。
その一方でチョン副会長は、「いまはAI成長という市況の追い風による成果を祝うより、当社の現実と競争力を冷静に見つめ、未来に備えるべき時期だ」と述べた。
さらに「AIを中心に半導体産業に新たな成長機会が開かれているが、世界経済と産業環境の不確実性は依然として高い」と指摘。「市場の好況がいつまで続くかは誰にも断言できず、外部からの挑戦も一段と強まっている」として、どのような状況でも迅速かつ柔軟に対応できる体制づくりの必要性を強調した。
Samsung Electronicsは、2026年7~9月期の連結営業利益が107兆4405億ウォン、売上高が195兆2532億ウォンだったとし、それぞれ前年同期比783%増、127%増と説明した。
一方、DX部門は同じAI需要を異なる経営環境として受け止めている。DX部門を率いるノ・テムン代表取締役社長は、「先行企業によるAIサービスやデバイスの革新競争が激化するなか、AI関連の半導体需要急増に伴う価格上昇も続いている」との認識を示した。
ノ社長は、AIを基盤とする業務方式やプロセス革新も急速に広がっていると指摘し、「変革の時代には、一歩先んじて準備し対応する企業だけが成長できる」と述べた。その上で、「DX部門は厳しい経営環境に直面しているが、いま皆で流した汗と努力は、より大きな成長の土台になる」と語った。
両トップが共通して打ち出したのは、技術と品質という基本の立て直しだ。チョン副会長は、市況に左右されない事業体制を築くには、原点である技術と品質に立ち返り、根源的競争力を強化しなければならないと訴えた。「最近は実績が改善したが、技術競争力が十分に回復したとみるのは難しい。まだ道のりは長い」とも述べた。
また、「次世代技術競争力の確保、製造効率の高度化、完全な品質確保と歩留まり向上という半導体事業の基本を忘れてはならない」としたうえで、「超格差は、顧客が認める技術競争力と品質によって証明されるべきだ」と強調した。DS部門が目指す働き方としては、顧客、技術、協業、実行、倫理の5つの価値を掲げた。
チョン副会長は、顧客への感謝と謙虚さの重要性にも言及し、好況期ほど顧客との関係を守るべきだと訴えた。Samsung Electronicsのメモリー事業の利益基盤が、従来の市況サイクル依存から長期供給契約(LTA)中心へ移りつつあることを意識した発言とみられる。
チョン副会長は「今日のAI半導体市場の成長と新たな機会は顧客がつくったものだ。好況であるほど一層謙虚であるべきだ」と述べた。さらに「好況を理由に顧客へ無理な要求をしたり、優越的な地位を振りかざしたりすることは決してあってはならない」とし、「好況は一時的で市場はいつでも変わり得るが、顧客の信頼は、どのような環境でも守るべき持続可能な競争力の基盤だ」と付け加えた。
ノ社長も「何より製品完成度、品質、オペレーションなど、デバイス事業の根源的競争力を高め、市場でのリーダーシップを強化しなければならない」と強調した。「製品完成度、品質、信頼性といった基本を強化し、顧客に最高のAI体験を提供することで、市場リーダーシップを一段と確かなものにすべきだ」と述べた。
加えて、「サプライチェーンを先行して把握・管理する能力を高め、差別化された原価競争力を確保しなければならない」とも指摘した。半導体価格の上昇が続くなか、部材調達の段階からコスト管理を徹底するよう求めた格好だ。
ノ社長は、基本強化に加え、新技術・新製品への挑戦を「未来への備え」と位置付けた。インテリジェントアイウェア、AIコンパニオンデバイス、ホームエンターテインメントAI TVといった新製品の成功事例を継続すべきだとした。
ロボット、空調、メドテック、車載などの新規事業については、コア技術の確保や開発・製造インフラの構築、投資を通じて成長基盤を整える方針も示した。ノ社長は「根源的競争力の確保、一歩先を見据えた未来準備と挑戦、AXによる抜本的な体質改善を通じ、DX部門の未来成長と飛躍の道を切り開こう」と呼び掛けた。