フランス上院は、暗号資産取引に関する税務情報を海外の課税当局と自動交換できるようにする法案を採択した。OECDの報告枠組み「CARF」やEUの「DAC8」への対応を進める一方、情報の集中管理に伴う個人情報保護やデータセキュリティへの懸念も浮上している。
10月29日付のCointelegraphによると、法案は上院で第1読会を通過し、法案第3421号として国民議会に送られた。
法案は、暗号資産に関する税務情報交換協定と、既存の金融口座情報交換協定の改正を一体で扱う内容。暗号資産分野の協定は、経済協力開発機構(OECD)が策定した暗号資産報告枠組み(CARF)に基づく。CARFは、参加国が暗号資産取引情報を共通基準で収集し、自動的に交換するための国際的な枠組みだ。
フランスは2025年財政法で、暗号資産に関する報告義務を導入した。これはEUの行政協力指令改正(DAC8)を反映した措置で、暗号資産サービス提供事業者には、顧客の本人情報や取引データを税務当局に報告する義務が課される。各国の税務当局は、これらの情報を利用者のEU域内の居住国と共有できる。
暗号資産課税の見直しも、2027年予算案の中で議論が進んでいる。フランス国民議会は10月16日、特定の法定通貨連動型ステーブルコインへの転換時に生じる譲渡益を、2027年1月1日から課税対象とする修正案を採択した。ただ、制度化はまだ確定していない。予算案の歳入部分の審議は28日に再開され、採決は11月3日に予定されている。
こうした国際連携の強化と並行して、データセキュリティへの不安も高まっている。貸付プロトコルMorphoでグローバル対外協力責任者を務めるフォスティン・フルレ氏は、DAC8によって氏名、住所、納税者番号、取引規模といった機微情報がEU域内の税務当局間で共有されると指摘した。EUレベルで情報が集約されれば、単一のセキュリティ事故が大量の暗号資産取引情報の流出につながりかねないとの見方を示している。
欧州委員会は2026年末までに、暗号資産の報告情報を集約する中央リポジトリを整備する計画だ。加盟国の税務当局は、自国の納税居住者に関する情報へアクセスできるようになる。租税回避の抑止効果が期待される一方、情報集中に見合ったセキュリティ対策の強化が不可欠になる。
こうした懸念は、フランスで相次ぐ暗号資産保有者を狙った犯罪とも無関係ではない。ブロックチェーンセキュリティ企業CertiKによると、2026年上半期に世界で確認されたレンチ攻撃52件のうち、33件がフランスで発生した。
フランスでは、国際的な税務情報交換の整備と並行して、2027年予算案でステーブルコイン課税の導入も議論されている。今後の議会審査では、課税範囲や情報共有のあり方に加え、個人情報保護の実効性も主要な論点となりそうだ。