Utexoは、Tetherの米ドル連動ステーブルコイン「USDT」をビットコイン上で再び展開する。RGBプロトコルを活用した新たなUSDTを11月28日に提供開始する予定で、2027年第1四半期にはライトニングネットワークとの連携による高速決済にも対応する計画だ。
Cointelegraphが29日に報じた。Utexoは、資産の取引データをオンチェーンに直接残さないRGBの仕組みを使い、送金情報を秘匿できる点を打ち出す。共同創業者兼CEOのビクトル・イナティウク氏は、ビットコインを決済・清算レイヤー、RGBを取引情報の秘匿レイヤーとして組み合わせることで、安全かつ高速な送金が可能になると説明した。
USDTは2014年、オムニプロトコルを通じて初めてビットコイン上で提供されたが、利用減少を受けて2023年8月に発行を停止した。Tetherは2025年8月にもRGB基盤のUSDT提供計画を打ち出したものの、実際の提供には至っていない。その後、Tetherは今年3月、Utexoのシード投資ラウンドとして750万ドル(約11億円)を出資した。UtexoはTetherのUSDT0プロトコルを活用し、ビットコイン上のUSDTを提供する方針だ。
技術基盤となるRGBは、ビットコイン上で資産コントラクトを実装するためのプロトコルだ。すべての取引情報を公開ブロックチェーンに記録するのではなく、取引当事者が資産移転を検証する設計を採る。これにライトニングネットワークを組み合わせれば、資産移転のたびにビットコインのベースレイヤーへ記録する必要がなくなる。イナティウク氏は、この構成により、SolanaやMonad(MON)、Sui(SUI)、Aptos(APT)を上回る速度も可能だと主張した。
一方で、ネットワーク間をまたぐ仕組みに伴うリスクは残る。Utexoのミント機能を通じて既存のUSDTをビットコイン側へ移すには、Arbitrum上でUSDT0をロックし、同額のビットコイン上のUSDTを発行する必要がある。償還時にはRGB資産をバーンし、元のネットワークでロックした資金を解除する。安全性はビットコインとRGBだけでなく、両ネットワークをつなぐブリッジ機構にも左右される。
市場投入に向けた準備も進んでいる。Utexoは10月22日、検証済みの専門事業者向けにUSDTのミントサービスを先行開放した。取引所、ウォレット、マーケットメーカーは、ビットコインのSignetテストネット上で、発行、秘匿送金、償還の各機能を試せる。
Utexoは、ビットコイン経済圏における取引や貸し付けの需要を見込む一方、イーサリアム型の分散型金融(DeFi)をそのまま持ち込む考えには否定的だ。イナティウク氏は「ビットコイン上でイーサリアムのDeFiを複製できると考えるのは大きな誤りだ。ビットコインは本来、決済のために作られた」と述べた。採掘事業者についても、中央集権型取引所に資産を移さず、ビットコインネットワーク内でBTCをUSDTに交換できれば、カストディリスクの低減やヘッジの自動化につながるとの見方を示した。
Utexoは今後12カ月で、ビットコイン上のUSDT残高を少なくとも10億ドル(約1500億円)まで拡大する目標を掲げる。従来は100億ドル(約1兆5000億円)を最終目標とし、中間目標として50億ドル(約7500億円)も示していた。ビットコイン上のUSDTがEthereumやTronに対抗できるかどうかは、プライバシーと処理速度を武器に企業の決済需要を取り込みつつ、ブリッジ機構への信頼を築けるかにかかっている。