ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は10月29日、同国の衛星インターネット事業「Rassvet」について、イーロン・マスク氏と緊密に連絡を取っていると明らかにした。ロシアがSpaceXの「Starlink」に対抗する独自の衛星通信網整備を進める中、両者の関係に注目が集まっている。
米ITメディアのTechCrunchによると、プーチン氏は同日開かれたロシア・アフリカ首脳会議で、マスク氏を「真の天才」と評した上で、SpaceXの衛星網構築に言及した。
プーチン氏は「イーロン・マスクは天才だ。真の天才だ」「彼はすでに5000基を超える衛星を軌道に投入した。我々はようやく第一歩を踏み出したところだ」と述べた。あわせて、Rassvetを巡ってマスク氏と緊密に連絡していると語った。
Rassvetは、ロシアがStarlinkに対抗して整備を進める衛星インターネットサービスだ。SpaceXが低軌道衛星を大規模に展開し、世界向けにサービスを提供しているのに対し、ロシアの計画はなお初期段階にあるとされる。今回の発言は、自国の衛星通信網構築を進める中で、マスク氏と接点を持っていることを公にした格好だ。
こうした発言が注目される背景には、ウクライナ戦争でのStarlinkの役割がある。ウクライナ軍は戦場での通信やドローン運用でStarlinkへの依存度が高いとされ、サービス提供企業の運用方針やアクセス制御が戦況を左右しかねないとの懸念が指摘されてきた。
実際、今月初めには10日間ほどにわたり、ウクライナのドローンで通信が断続的に途絶える事態が起きた。The Wall Street Journalは、マスク氏がSpaceXに対し、ウクライナのStarlink利用を制限するよう指示したと報じた。一方、別の報道では、その指示はホワイトハウス側によるものだったとの見方も示された。判断の主体を巡って報道は分かれているものの、現地で通信障害が起きた点が論争の中心となった。
マスク氏はX(旧Twitter)への投稿で、ウクライナがStarlinkの利用規約に違反したと主張した。さらに、Starlinkの技術が殺傷を目的とした攻撃ドローンに使われたとも述べた。民間企業が提供する衛星通信網の軍事利用が進む中、提供事業者にどこまで利用制限の権限と責任があるのかが、改めて争点となっている。
足元では、ウクライナ国内のStarlinkは正常に運用されているとみられる。ただ、一連の議論は、民間の衛星通信網が現代戦の中核インフラになっており、事業者の判断が戦場に直接影響し得ることを改めて浮き彫りにした。
マスク氏はこれまでもStarlinkの重要性を繰り返し強調してきた。Xでは「Starlinkが停止すれば、ウクライナの前線は即座に崩壊する」「これは脅しではなく、単なる事実だ」と投稿したという。
ロシアがRassvetの構築を加速させる中、プーチン氏がマスク氏との連絡を公表したことで、両者の関係を巡る憶測も広がっている。もっとも、具体的な協力の有無や、マスク氏がロシアの衛星事業でどのような役割を担うのかは明らかになっていない。ロシアの独自衛星網がどこまで具体化するのか、またウクライナ戦争で衛星通信網の影響力がどう変化するのかが、今後の焦点となる。