欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁が、任期満了前の2027年2月7日付で退任すると表明した。これを受け、暗号資産に厳しい姿勢を取ってきた同氏に対し、暗号資産業界から反発の声が上がっている。
ブロックチェーンメディアのU.Todayが29日(現地時間)に報じたところによると、Gemini共同創業者のタイラー・ウィンクルボス氏は、ラガルド氏の発表直後にX(旧Twitter)へ投稿し、「あなたのレガシーは暗号資産と戦い、失敗したこととして残る」「次の行動に幸運を祈る」と批判した。
ラガルド氏は同日、退任時期を公表した。2019年11月に就任しており、当初予定されていた8年の任期を約9カ月残して退くことになる。後任は欧州理事会が選出する予定だ。
今回の反応の背景には、ラガルド氏が在任中、一貫して暗号資産に否定的な見解を示してきた経緯がある。2021年1月にはビットコインを「極めて投機的な資産」と位置付け、違法な金融活動に利用される可能性があると警告した。Reuters Nextカンファレンスでも、ビットコインがマネーロンダリングなどの不法行為に使われてきたとして、国際的な規制連携の必要性を訴えていた。
2022年には、その批判姿勢をさらに強めた。オランダのテレビ番組のインタビューでは、暗号資産について「何の価値もない」と発言。裏付けとなる基礎資産がなく、投資家保護の面でも問題があると指摘し、投資経験の乏しい個人が投機的な取引によって貯蓄を失うリスクに懸念を示した。
ラガルド氏は家族の事例にも触れている。警告にもかかわらず息子の1人が暗号資産に投資し、2023年11月時点で投資資金の大半を失ったと明らかにしていた。
中央銀行の準備資産への組み入れを巡っても、ラガルド氏は慎重姿勢を崩さなかった。2025年1月には、欧州の中央銀行がビットコインを準備資産として保有する案に否定的な立場を示した。チェコ国立銀行のアレシュ・ミフル総裁がビットコイン投資の可能性を検討すべきだと提案したのに対し、ラガルド氏は準備資産には流動性、安全性、確実性が必要だとして反対した。
ラガルド氏の退任表明を受け、欧州の通貨当局における今後の暗号資産政策にも関心が集まっている。ECB総裁の交代が、欧州の暗号資産規制の方向性に変化をもたらすとの見方もあるが、後任候補の暗号資産に対する見解は現時点で明らかになっていない。
焦点は、欧州理事会が選ぶ次期ECB総裁が金融政策と暗号資産をどう位置付けるかに移る。ラガルド氏の退任が、欧州の金融当局と暗号資産業界の関係にとって転機となるかどうかは、後任の政策運営に左右されそうだ。