暗号資産取引所大手のBinanceに関連するウォレットから、最大55億7000万ドル(約8355億円)規模の暗号資産が移動し、不正流出の可能性が浮上した。ステーブルコイン発行元のTetherとCircleは関連資産の一部を凍結しており、Binanceも事実関係の確認を進めている。
30日、ブロックチェーン関連メディアなどによると、Binanceに関連するEthereum、Bitcoin、Tronの各ウォレットから、少なくとも55億7000万ドル相当の暗号資産移動が確認された。
内訳は、Ethereumが約35億1000万ドル(約5265億円)、Bitcoinが1万8270BTC相当の約14億4000万ドル(約2160億円)、Tronが約6億3000万ドル(約945億円)。いずれもオンチェーンデータに基づく推計で、実際の被害額が確定したわけではない。
ブロックチェーン分析企業Arkham Intelligenceは、「Binance-Hacker-1029」と分類したウォレット群の保有資産を約58億4000万ドル(約8760億円)と試算した。もっとも、これは追跡対象ウォレットに残る資産の評価額であり、確定した流出額とは分けてみる必要がある。
攻撃経路を巡っては、EIP-7702の権限委任機能が悪用された可能性が指摘されている。関与が疑われるアドレスは、Tornado Cash経由で資金供給を受けた後、Binanceのホットウォレットに権限委任を行ったとの分析が出ている。
その後、約3分以内に当該ウォレットから16万7464ETHと63種類のトークンが新たなアドレスに移された。攻撃者が必要な署名をどのように取得したのかは、現時点で明らかになっていない。
ステーブルコイン発行元による凍結対応も進んだ。Tetherは関連アドレスで約9億7510万USDTを、Circleは同じアドレスで約8億2300万USDCを凍結した。凍結額の合計は約18億ドル(約2700億円)に達する。
一方、Tetherの最高経営責任者(CEO)パオロ・アルドイノ氏は、今回の事案に関連して15億6700万ドル(約2350億円)超のUSDTを凍結したと明らかにした。CircleのCEOであるジェレミー・アレア氏も、捜査当局と連携し、8億ドル(約1200億円)超のUSDCを凍結したと発表した。発行元の公表値と、特定の受け取りウォレットを対象にしたオンチェーン集計では、集計範囲が異なるという。
Binanceは、潜在的なセキュリティ上の問題を認識し、調査を進めていると説明した。現時点では顧客資産への影響は確認されていないとしている。広報担当者によると、予防措置として複数ネットワークで出金を一時停止した。
共同創業者のチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏は、今回の事案について「ハッキングのように見える」としつつ、利用者資金は全額保全される見通しだと述べた。Binanceは利用者に対し、非公式のリンクやメッセージ、アカウント情報の要求に注意するよう呼びかけている。
市場も反応した。Bitcoinは7万9000ドルを下回り、Binanceの独自トークンBNBは約7%下落した。一方、匿名性を強化した暗号資産Monero(XMR)は約6%上昇した。
今回の事案がハッキングと最終的に確認されれば、2025年2月に発生した約15億ドル(約2250億円)規模のBybit流出事案を上回り、過去最大級の暗号資産流出事件となる可能性がある。もっとも、Binanceの最終的な調査結果や実際の被害規模、追加の凍結・回収の有無は、現時点では明らかになっていない。