政府は、金融会社が別途設立する受託法人を通じて加入者の積立金を運用する「基金型退職年金」の導入を進める。従来の契約型と基金型を併存させることで、500兆ウォンを超える退職年金市場を巡る金融各社の競争が一段と活発になる見通しだ。
政府は29日、与党との協議を経て、関係省庁合同で「退職年金機能強化策」を発表した。2月の労使政共同宣言で示した方向性を具体化したもので、全事業場の退職給付に対する社外積立の段階的義務化と、基金型退職年金の活性化を柱に据えた。
退職年金市場は急拡大している。昨年末の積立金は501兆4000億ウォンと、前年末の431兆7000億ウォンから16.1%増え、初めて500兆ウォンを突破した。
昨年の年間収益率は6.47%で、集計開始以来の高水準となった。実績配当型商品の投資比率も、2015年の6.9%から昨年は24.6%へ上昇した。
一方で政府は、市場拡大にもかかわらず、事業場ごとの導入格差や長期収益率の低さがなお課題だとみている。直近10年間の事業場ベースの退職年金導入率は26.5%にとどまった。昨年の退職年金収益率6.47%も、国民年金の18.82%、公務員年金の17.2%、私学年金の18.9%を下回る。
このため政府は、すべての事業場を対象に、退職給付を金融会社など外部に積み立てる仕組みを段階的に義務化する。
年内に勤労者退職給付保障法の改正案が成立した場合、1年の準備期間を経て、2028年に従業員100人以上の事業場から適用を開始する。2029年には10~99人、2030年には10人未満の事業場まで対象を広げる方針だ。
中小企業の負担軽減策も盛り込む。早期導入事業場には積立金のマッチング支援を行うほか、新規導入事業場には経営資金の融資費用も支援する。従業員30人未満の事業場には、退職年金手数料の特例も適用する方針だ。
金融投資業界が特に注目しているのが、基金型退職年金の導入だ。
基金型は、加入者が個別に商品を選んで運用する既存の契約型とは異なり、専門性を備えた受託法人が積立金を集約して運用する仕組み。運用益と損失は加入者に帰属する。対象は確定拠出年金(DC)とIRPで、同一事業場内で契約型と基金型を併用できるようにする。
なかでも新たに導入するのが、金融会社が単独またはコンソーシアムで営利型の受託法人を設立し、複数事業場の退職年金を運用できる「金融機関開放型」だ。このほか、複数の使用者または労使団体が運営する「連合型」、公的機関が運営する「公的機関開放型」に区分する。
金融機関開放型の受託法人に求める最低資本金は120億ウォン(約13億円)とする予定。受託法人は予備認可と本認可を受ける必要があり、加入者利益を最優先する受託者責任や損害賠償責任も負う。
証券会社にとっては、従来の退職年金口座や商品の販売にとどまらず、別途設立する受託法人を通じた基金運用へと事業領域を広げる機会となる。社外積立の義務化で退職年金に流入する資金の増加も見込まれ、運用実績や商品、年金プラットフォームを巡る金融各社の競争は一段と強まりそうだ。
契約型退職年金に関する投資規制も見直す。現在、IRPは積立金の70%までしかリスク資産に投資できないが、政府は市場規模や変動性を踏まえ、この上限を段階的に引き上げる。DC型のリスク資産投資上限を拡大するかどうかは、今後の検討課題とした。
投資対象の拡大も進める。現在、DCとIRPでは投資できない総合投資口座(IMA)と発行手形を、新たに投資対象に加える。証券会社の発行手形・IMA事業の拡大にも追い風となりそうだ。
ディフォルトオプションも、収益率とリスク調整後リターンを軸に再整備する。現在およそ320の商品を評価しており、成績の振るわない商品については、新規組み入れ停止や除外を検討する。適用案内の時点も、満期後4週間から満期前2週間へ前倒しし、低金利のまま資金が滞留する期間を短縮する。
退職年金事業者の評価方法も改める。従来の定性評価中心から、収益率や長期維持、年金受給といった定量指標重視へ切り替える。これまで優良事業者の一部のみを公表してきた方式を見直し、評価結果をより客観的に開示することで、事業者間の競争を促す考えだ。
政府は11月に勤労者退職給付保障法の改正案を取りまとめ、12月の国会本会議での可決を目指す。
チェ・ジョンジン韓国投資証券年金革新本部長は、「勤労者の立場では、資本市場に積極的に参加できる手段が広がり、収益率向上の転換点になり得る」と述べた。その上で、「基金型退職年金の導入に伴う競争激化は、既存の契約型市場にも前向きな刺激となり、証券会社にとっても新たな機会になる」との見方を示した。
また、「IRPのリスク資産投資上限の緩和と投資商品の拡大は前向きに評価できる一方、DC型のリスク資産投資上限の拡大可否は今後の検討課題として残った」と指摘。「長期の老後資産形成という制度趣旨を踏まえれば、DC型についても早期に制度改善が進むことを期待する」と付け加えた。