GoogleのTPU外販拡大が、NVIDIA優位のAI半導体市場に変化を促す可能性がある。写真=Shutterstock

Googleが、人工知能(AI)半導体「Tensor Processing Unit(TPU)」の外販を本格化する。2027年からOracle Cloudの顧客向けにTPUの提供を始めるほか、OpenAIでも採用が広がるとの観測が浮上しており、NVIDIAが主導してきたAIチップ市場の構図に変化をもたらす可能性が出てきた。

Business Insiderによると、GoogleとOracleは28日(現地時間)、2027年からOracle Cloudの顧客がGoogleのTPUを利用できるようにする契約を発表した。Googleが自社プラットフォーム以外のハイパースケーラー経由でTPUを提供する初の事例になるという。

TPUは、検索をはじめとする自社サービスの計算性能向上を目的に、Googleが10年以上にわたって開発してきた独自AIチップだ。これまでは、TPU事業の成長余地はAnthropicの需要に大きく左右されるとの見方が強かったが、今回の契約を機に外部顧客基盤が広がれば、事業拡大が新たな局面に入るとの見方も出ている。

NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は年初、ポッドキャスターのドワルケシュ・パテル氏とのインタビューで、Google TPUの成長性に懐疑的な見方を示していた。「AnthropicがなければTPUが成長する理由はあるのか。TPUはAnthropic向けが100%だ」と述べていた。もっとも足元では、TPUの活用を検討する企業が増えており、当時とは状況が変わりつつある。

OpenAIでもTPU活用が広がる可能性がある。OpenAIは、自社AIモデルをTPU向けに最適化するソフトウェアエンジニアの求人を出した。IT専門メディアのThe Informationは、OpenAIがGoogleからTPUを購入する計画だと報じている。

複数のアナリストは、企業が特定の半導体ベンダーへの依存を下げるため、複数種類のチップを組み合わせる「マルチチップ戦略」を採用し始めていると指摘する。こうした動きが広がれば、GoogleのTPU事業の急成長につながる可能性があるほか、Googleを含む競合各社にとっては、NVIDIAの中核市場へ食い込む余地も広がりそうだ。

もっとも、AI半導体市場におけるNVIDIAの規模は依然として圧倒的だ。Google自身も、自社AIインフラ向けにNVIDIAのグラフィックス処理装置(GPU)を大規模に調達する側にある。それでも、長年育ててきたTPUが外部市場で本格的な成長軌道に乗る可能性は高まっている。

Anthropicが今週提出した新規株式公開(IPO)関連書類によると、同社は2026年4月から2033年7月までに、Googleのコンピューティング資源に1145億ドルを支出する計画だ。TPUに直接充てる金額は明らかにしていないが、Googleおよび他の供給元から確保するTPU演算容量に1250億〜1500億ドルを投じると見積もった。

同社は同書類で、GoogleとNVIDIAのチップに加え、AmazonのTrainiumやAMDのGPUも利用していると明らかにした。主要AI企業の間で、複数ベンダーの半導体を併用する流れが鮮明になっている。

マルチチップ戦略が広がれば、NVIDIAの価格決定力が弱まる可能性があるとの見方もある。企業がNVIDIA製品に依存せず、Googleなど他社製チップも併用するようになれば、NVIDIAが価格を主導しにくくなるためだ。

GoogleのTPU事業は、今後の成長見通しも大きい。みずほは今月公表したレポートで、TPU売上高が2026年に280億ドル、2027年に670億ドルに達すると予測した。2028年には最大1000億ドルまで拡大する可能性があるとみている。TD Cowenのアナリストは、2028年のTPU売上高が1380億ドルとなり、Google Cloud売上高の34%を占める可能性があると試算した。

ただ、こうした予測を踏まえても、現時点ではNVIDIAとの差は大きい。NVIDIAは直近四半期だけで962億ドルの売上高を計上した。市場もGoogle TPUの成長シナリオにすぐ反応したわけではなく、NVIDIA株は水曜日に横ばい圏で推移した。

一部アナリストは、市場がGoogleのTPU事業の潜在力を過小評価しているとみる。みずほのアナリストは10月18日付のレポートで、「GoogleのTPUハードウェア事業は、現在の市場コンセンサスが織り込む以上に大きな機会になりつつある」と評価した。自社データセンターでのレンタル提供に加え、チップを外部に直接販売できれば、大規模な資本支出負担の一部を和らげる効果も見込めるという。

GoogleのAIインフラ投資の拡大が見込まれるなか、Bank of Americaのアナリストは、同社の大型投資の進め方について、競合と比べて「相対的に効率的」だと評価した。TPUが外部顧客向けだけでなく、Google自身のAIサービスにも活用されている点をその根拠に挙げた。

Googleにとっては、検索機能の高度化を目指して10年以上投資してきた半導体技術が、新たな収益源に育つ可能性が高まっている。みずほは、AIエージェントが既存の検索サービスを侵食し得る局面では、TPU事業が中核の検索事業への打撃を和らげる役割も果たし得ると分析している。

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