廃業したスタートアップのソースコードや社内データが、AI学習用データとして売買される動きが広がっている。公開Web上の情報や合成データだけでは、実際の業務環境を十分に再現しにくいとの見方が広がるなか、事業を終えた企業のデジタル資産に新たな需要が生まれている。
MIT Technology Reviewは28日(現地時間)、ニュースレター「The Download」で、AI開発企業の間で、廃業したスタートアップのコードやメール、業務チャット、各種文書を買い集めるケースが増えていると報じた。
暗号資産スタートアップの創業者、キーラン・ミスケル(Keelan Miskell)は、会社の清算に伴いソースコードを約2万5000ドルで売却した。Googleの業務ツールやNotion、Figma、Slackに残された記録についても、約1万5000ドルで売却を進めているという。ただ、この業務データの取引額はまだ確定していない。
この取引を仲介したスタートアップ清算支援会社のSimpleClosureは、4月にコードや業務データの販売サービスを開始した。同社によると、関連取引は150件を超え、清算支援案件の47%でコードやデータの売却が行われた。
買い手の狙いは、実際の組織で行われる協働や意思決定の流れを、AIエージェントの訓練に生かすことにある。一方で、実務データが合成データに比べてAIの性能をどの程度高めるのかについては、公開された比較検証がなお限られている。
個人情報保護や同意を巡る課題も残る。社内メールやメッセンジャーの記録には、従業員や顧客の機微情報が含まれる可能性があるためだ。企業の清算時に、そうした記録をAI学習向けに処分できる権限の範囲が不明確な場合もある。データの所有権が誰にあるのか、また清算の過程で利害関係者の同意が適切に確保されたのかが、主要な論点になっている。