タイ最高裁は、ビットコインを刑事法上の「財産」と認める一方、法定通貨には当たらないとの判断を示した。強盗事件で被害者に強要されたビットコイン送金については返還を命じ、暗号資産の法的位置付けを改めて明確にした。暗号資産関連メディアのCryptopolitanが28日、現地時間で報じた。
今回の判断では、ビットコインが財産犯の対象となり得る一方、法的には通貨と同等の地位を持たないことが示された。最高裁は、債務の弁済に用いられる「通貨」であるかどうかと、保有や移転が可能で価値を持つ「財産」であるかどうかは別の論点だと整理し、ビットコインは後者には該当するが前者には当たらないと結論付けた。
裁判所はその根拠として、民商法上、経済的価値を持つ無体物にも財産権が認められる点を挙げた。また、ビットコインは市場で価格が形成され、買い手がいれば現金化できることから、交換可能な資産としての性格を持つと位置付けた。さらに、2018年制定のデジタル資産事業に関する緊急勅令にも言及し、暗号資産がネットワーク上の電子データであり、交換手段として扱われていることを判断材料とした。
一方で、タイ中央銀行は価格変動の大きさを理由に、暗号資産を法定通貨とは認めていない。最高裁もこの立場を踏まえ、ビットコインは「法定通貨ではない」と明示した。価値を持ち売買が可能であっても、法的に通貨と同じ扱いを受けるわけではないという判断だ。
判決の対象となったのは、2022年9月15日にサムイ島で起きた強盗事件だ。外国人グループが被害者とロシア国籍の妻に対し、子どもの安全を脅かしたうえで暴行し、被害者に5万ドルと187万8000バーツをビットコインに換えさせ、加害者側が管理するウォレットへ2.480801BTCを送金させた。
被告は、移動手段や宿泊先の手配に加え、グループのフェリーによる逃走の支援にも関与したとされる。一審は懲役15年を言い渡したが、その後10年に減刑された。控訴審はこれを維持し、最高裁も問題の送金は自発的な取引ではなく強要によるものと認定した。裁判所は、奪われたビットコインの返還を命じ、返還できない場合は187万8000バーツを支払うよう命じた。
今回の判断は、タイの既存の暗号資産政策とも整合する。タイは投資資産としての活用には比較的前向きな一方、決済手段としての利用には制限を設けてきた。タイ証券取引委員会は2022年3月18日、暗号資産の法定通貨としての使用を禁じ、違反した事業者に対しては最大30万バーツの罰金に加え、違反1日当たり1万バーツの追加罰金を科す方針を示した。
投資面では一部規制緩和も進めている。タイは2025年1月から2029年12月まで、認可プラットフォームで生じた暗号資産の売買益に対するキャピタルゲイン課税を免除した。2025年8月には、観光客がデジタル資産をバーツに換えて支出できる「TouristDigiPay」の試験事業も開始した。ただし、この制度でも加盟店が受け取るのはバーツであり、暗号資産が直接の決済手段になるわけではない。
このほかタイは最近、ビットコインとイーサリアムの現物ETFの上場も認めた。この措置は2026年10月16日に発効した。投資商品としての受け入れは進める一方、法定通貨としての地位や直接決済は認めないという二層構造が、今回の最高裁判断によって改めて確認された形だ。