中国ブランドの電気自動車(EV)は、欧州メーカーの同クラス車に比べて生産コストが平均35%低い――。コンサルティング会社AlixPartnersの分析でこうした実態が明らかになった。優位の背景には、補助金だけでは説明できない電池サプライチェーンの強さと、製品開発の速さがあるという。EVメディアInsideEVsが21日(現地時間)に報じた。
AlixPartnersによると、中国で生産される中国ブランドEVの生産コストは約2万ドル。これに対し、同等の欧州製EVは約3万1000ドルに上る。
同社は、この差を単純な財政支援の有無ではなく、企業運営や製造体制を含む構造的な競争力の差とみている。補助金だけでは埋めきれないコスト優位が、中国勢にはあるとの見方だ。
主な要因の一つが電池分野だ。AlixPartnersは、欧州が電池生産や原材料調達で域外への依存度が高く、高コスト体質から抜け出しにくいと分析した。
原材料確保の面では、欧州はリサイクルへの依存が大きいものの、現時点の処理能力では電池生産を継続的に支えるには不十分だという。さらに、欧州のエネルギー価格は米国や中国より高く、生産コストを押し上げているとした。
対応策として同社は、電池工場への投資拡大を挙げた。電池生産設備の新設と運営を継続的に後押しするため、メーカー向け支援や各種インセンティブが必要だと指摘。工場稼働後の段階では、エネルギーコストへの補助も検討課題になるとの見方を示した。
もう一つの柱が、中国企業の開発スピードだ。報告書が言及した「チャイナスピード」は、業界標準より短い意思決定サイクル、少ない管理階層、仮想開発を軸とした試験・開発手法を指す。
意思決定者に至る承認プロセスが短く、実車検証を開発終盤に絞る進め方が、開発の迅速化につながっていると説明した。
こうした手法は、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)や車両プラットフォーム、人間工学設計など、EV開発全般で見られるという。中国企業は新技術の導入でも機動力が高く、市場投入の速度で西側企業を上回っていると評価した。
もっとも、スピードが常にプラスに働くわけではない。発売を急ぐあまり、試験・検証が不十分になるリスクもあると指摘した。
InsideEVsはその例として、Lynk & Coの車両で、走行中に音声コマンドによって照明が消える可能性があるソフトウェア不具合を紹介。投入を急ぐ戦略が、より長いテストで防げたはずの問題を残す場合があると伝えた。
欧州側にも巻き返しの余地はある。AlixPartnersは、欧州が電池製造能力を引き上げ、企業組織を簡素化できれば、差を縮めることは可能だとみている。
ただ、関税だけで中国勢の競争優位を止めるのは難しいとの見方を示した。関税は「追いつくための時間を稼ぐ」効果にとどまり、中国企業のコスト競争力そのものを崩す決定打にはなりにくいとしている。
今後、中国EVメーカーが現地生産を拡大すれば、一部のコスト優位は薄れる可能性がある。もっとも、自国サプライチェーンとは別に、企業運営に根差した構造的な優位は残る公算が大きいとAlixPartnersは結論付けた。
その上で同社は、西側企業が収益性と市場での地位を維持するには、事業運営のあり方そのものを抜本的に見直す必要があると強調した。