HBM4の出荷の様子(写真=Samsung Electronics)

韓国経済で、半導体という単一産業への依存が強まっている。AI需要を背景に半導体輸出は過去最高水準に拡大し、潜在成長率の見通しを押し上げている一方で、成長の恩恵が一部の大企業に集中し、マクロ指標と家計の景況感の乖離が広がるとの懸念も強まっている。

国際通貨基金(IMF)は最近公表した世界経済見通しで、韓国の潜在成長率が前年の1.94%から、2026年は2.14%、2027年は2.20%に上昇すると予測した。潜在成長率は、物価を過度に押し上げることなく、労働力と生産設備を活用して達成できる成長率を示す。

この見通しが実現すれば、韓国の潜在成長率は約40年ぶりに2年連続で上昇することになる。IMFは2026年の韓国の1人当たり国内総生産(GDP)についても、4万ドルを上回るとみている。

こうした成長見通しの改善を支えているのが、半導体輸出の急伸だ。産業通商資源部によると、2026年9月の輸出額は1209億4000万ドルとなり、月間ベースで初めて1200億ドルを超えた。

このうち半導体輸出は、単一品目として初めて600億ドルを突破した。2026年1〜9月の累計輸出額は8145億ドルに達した。

輸出増を主導したのはSamsung ElectronicsとSK hynixだ。両社はAI普及で拡大した高性能メモリ需要を取り込み、輸出実績を押し上げている。

半導体への傾斜が強まるなか、韓国経済は日本型よりも台湾型に近づきつつあるとの見方も出ている。

韓国と台湾はいずれも、輸出、設備投資、株式市場に占める半導体の比重が大きい。韓国はSamsung ElectronicsとSK hynix、台湾はTSMCを中心に、世界の半導体サプライチェーンで重要な役割を担っている。

ただ、半導体の成果が経済全体に波及する仕組みには違いがある。台湾にもメモリ大手のNanyaはあるものの、成長の中核はTSMCを軸とするロジック半導体のエコシステムだ。

このエコシステムでは、半導体の設計、製造、後工程、基板、サーバー組み立てまでを、複数の上場企業が分担している。

TSMC、UMC、世界最大のOSAT企業であるASEは、新竹から高雄にかけて集積する。台湾証券取引所によると、2026年に上場申請を予定する約40社のうち、15社超がAIサプライチェーン関連企業だという。

台湾証券取引所のシャーマン・リン理事長は6月のCOMPUTEX 2026で、「台湾をグローバルAIエコシステムの中核にしているのは、単一の企業や技術ではなく、完結したバリューチェーンだ」と述べた。AI需要の恩恵が複数企業に分散しやすい分業構造だとの認識を示した発言と受け止められている。

これに対し、韓国ではSamsung ElectronicsとSK hynixが、高帯域幅メモリ(HBM)の生産からパッケージングまでを自社で手掛ける。Samsung Electronicsは忠清南道温陽、SK hynixは忠清北道清州の事業所でメモリのパッケージングを進めている。

次世代HBM4の増産に向けた設備拡張も、両社が自ら投資して進めている。

台湾のように裾野の広い分業構造とは異なり、韓国は半導体好況の成果がまず両社の業績に積み上がる垂直統合型の色彩が濃い。このため、成長の果実が一部大企業に偏り、マクロ経済指標と国民が実感する景気の間に開きが広がりかねないとの懸念が出ている。

韓国開発研究院(KDI)は12日、半導体スーパーサイクルが終息すれば、好況に隠れていた構造的な問題が表面化し、2030年以降に韓国経済がマイナス成長局面に入る可能性があると警告した。

経済協力開発機構(OECD)も6月、韓国の潜在成長率を2026年1.66%、2027年1.52%とし、従来見通しを引き下げた。低下要因として、生産年齢人口の減少、投資の縮小、生産性の停滞を挙げた。

韓国が台湾型の経路をたどるかどうかは、OECDが指摘した人口、投資、生産性の課題を、半導体好況を通じて解消できるかにかかっているとの指摘もある。台湾では足元で、成長の牽引役が半導体産業に偏る一方、内需の弱さが課題になっているとされる。

TSMCなど大企業を中心とした賃金上昇が民間部門全体に十分波及せず、物価上昇に対して実質賃金の伸びが鈍いことから、民間消費支出や小規模事業者の売り上げがマイナス成長を記録するなど、内需との温度差が広がっているとの見方がある。

韓国でも足元では、半導体を除く製造業輸出の鈍化がみられる。半導体生産の増加が、雇用や中間財需要の拡大に結び付きにくいとの指摘もある。

半導体輸出の成果を、自動車、造船、バッテリーなど非半導体分野への産業投資や国内消費につなげられるかが、台湾型への傾斜を避ける上での焦点になりそうだ。

産業界関係者は「現場で感じる他の製造業の景況感は、すでに4〜5年前から低迷していた」としたうえで、「高金利の長期化や原材料価格の急騰、内需縮小で工場稼働率も下がっており、すでに生き残りを優先する局面に入っている」と語った。

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