米金融改革団体Better Marketsは、米商品先物取引委員会(CFTC)が検討する個人向け暗号資産取引の監督枠組みに反対を表明した。証拠金取引やレバレッジ取引を含む分野をCFTCの監督下に置けば、米証券取引委員会(SEC)より投資家保護の水準が低下する恐れがあると主張している。
CFTCは10月5日、証拠金やレバレッジ、与信を伴う個人向け暗号資産取引を巡る新たな規制のあり方について、意見募集の手続きに入った。検討案には、一定の要件を満たした暗号資産取引プラットフォームをCFTCが直接監督する新たな連邦規制区分を設ける構想も含まれている。
Better Marketsで証券政策を担当するベンジャミン・シフリンは、CFTCは個人投資家保護を担う機関として適切ではないと指摘した。SECと異なり、CFTCには投資家保護を中核任務とする制度設計がなく、本来は機関投資家中心のコモディティ・デリバティブ市場を規制するための機関だと批判している。
またシフリンは、CFTCの規則には、SECが所管する証券取引に適用されるような投資家保護の仕組みが十分に備わっていないと主張した。その上で、個人向け暗号資産取引を規制する主体としては、CFTCは「適切な機関ではない」との見方を示した。
今回の論点は、米議会でクラリティ法が前進しなかった後、CFTCとSECが既存法の枠内でそれぞれ暗号資産政策を進めている流れとも重なる。両機関は、新たな立法がなくても一定の措置を講じ得るとの姿勢をこれまで示してきた。
Better Marketsは、CFTCが拠り所とする法的根拠にも異議を唱えた。シフリンは、CFTCが根拠とする条項は本来、レバレッジ型の貴金属取引に絡む詐欺を防ぐために導入されたもので、これを個人向け暗号資産市場全体の主要な監督権限にまで広げて解釈することはできないと主張した。議会がこの条項を通じて、CFTCに個人向け暗号資産規制の主導権を与えようとしたとの見方も否定した。
市場構造を巡っても批判は強い。シフリンは、検討中の枠組みでは、FTXの破綻で問題視された市場参加者間の系列関係や利益相反構造を許容しかねないとみている。取引所と関連事業者の密接な関係を、規制上十分に遮断できない可能性があるという。
さらにシフリンは、CFTCトップのマイク・セルリグ委員長が掲げる「米国を世界の暗号資産の首都にする」との目標についても疑問を呈した。「なぜそれが望ましいのか説明していない」と批判した上で、暗号資産はこの18年間、さまざまな主張がなされてきたにもかかわらず実社会での有用性を十分に示せておらず、投機や犯罪に利用されていると厳しく指摘した。
一方で、こうした見方に異を唱える声もある。Nobodyius Wealth Managementの代表ネイト・ジェラシは、業界が求めているのは明確なルールだとした上で、議会が制度整備を進められないのであれば、最終的にCFTCとSECが動かざるを得ないと反論した。規制の空白が長引くほど、監督当局による独自対応の必要性は高まるとの見方だ。
SECも別の側面から対応を加速している。最近では、投資顧問会社に関するカストディ規則の一部緩和を提案したほか、限定的に米国株のトークン化取引を認め、証券法を暗号資産にどう適用するかについて新たな指針も示した。米国の暗号資産規制は、立法不在のなかでCFTCとSECがそれぞれ権限の範囲を広げる方向に進んでいる。
今後の焦点は、個人向け暗号資産取引をどの当局が、どの法的根拠に基づいて監督するのかにある。CFTCが意見募集を経て具体案を示したとしても、投資家保護の水準や市場構造の規律を巡る論争は続く公算が大きい。