ステーブルコイン発行体は米国債市場でも存在感を強めている(画像はChatGPT生成)

世界の債務残高が365兆ドル(約5京475兆円)と過去最高を更新するなか、ステーブルコイン発行体が米短期国債の新たな有力買い手として台頭している。準備資産として短期国債の保有を増やしており、海外投資家の保有比率低下を一部補う構図が鮮明になってきた。ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが10月1日、報じた。

国際金融協会(IIF)が9月23日に公表した「グローバル・デット・モニター」によると、今年年初時点の世界債務は365兆ドルだった。半年間で10兆ドル(約1500兆円)増え、IIFは主な要因として、新興国での借り入れ拡大、人工知能(AI)インフラへの投資、軍事支出の増加を挙げた。

このうち新興国の債務は110兆ドル(約1京6500兆円)とされ、増加額は6兆5000億ドル(約975兆円)に達した。IIFは中国を最大の押し上げ要因とみている。

もっとも、債務の増加ペース自体は前年同期より鈍化した。前年同期の増加幅は21兆ドル(約3150兆円)だった。IIFは背景として、高金利や利払い負担の増加、エネルギーコストの上昇、イラン紛争が投資家心理を冷やした点を指摘した。

こうしたなか、サンフランシスコ連邦準備銀行(サンフランシスコ連銀)は9月28日に公表した書簡で、「米国債を誰が買っているのか」に注目した。米政府債務はGDP比で2006年の約35%から足元では100%前後まで上昇しており、その資金の出し手も変化しているという。

最大の変化は、海外投資家の保有比率低下だ。海外投資家の比率は2000年代後半のピーク時には50%を超えていたが、2026年初めには約30%まで低下した。

とりわけ減少が目立つのは海外政府部門だ。1970年代には米国債の保有をほぼ独占していたが、2026年初めにはその比率が40%程度まで縮小した。中国が2026年半ばに国債購入規模を半減したことも、この流れに影響したとされる。

こうした減少分の一部を吸収しているのが民間部門で、その新たな担い手として浮上しているのがステーブルコイン発行体だ。

サンフランシスコ連銀によると、2023年以降、ステーブルコイン発行体は日本を上回るペースで米短期国債の保有を増やしている。日本は米政府債務の最大の海外保有国とされるが、ステーブルコイン発行体の保有残高も直近5年で約2000億ドル(約30兆円)積み上がった。

背景にあるのは、ステーブルコインの準備資産の仕組みだ。ステーブルコインは保有者に対し、ドルとの1対1での償還をうたうため、発行体は償還に備えて低リスクで流動性の高い資産を確保する必要がある。その受け皿として米短期国債が選ばれている。

サンフランシスコ連銀は、この構造は預金流出に備えて現金同等物の準備を維持する銀行に似ていると説明した。換金可能性への疑念が生じれば、取り付けに似た事態を招く恐れがあるとしている。

こうした構造は米国の制度整備にも反映されている。2025年に制定された「ジニアス法」は、決済型ステーブルコインに対する初の連邦規制を導入し、発行体に対してトークンを適格資産で1対1に裏付けるよう義務付けた。適格資産には米国債も含まれる。

2026年6月時点のステーブルコイン市場規模は約2700億ドル(約40兆5000億円)と推計されている。

サンフランシスコ連銀は、こうした国債需要が今後さらに拡大する可能性があるとみている。現在の流れが続けば、ステーブルコイン発行体による米短期国債需要は2030年ごろにほぼ倍増し、約4000億ドル(約60兆円)に達する可能性があるという。

ワシントンの巨額な資金調達需要全体を賄う規模ではないものの、短期債市場には無視できない影響を及ぼしうるとの見方もある。国際決済銀行(BIS)の研究でも、ステーブルコイン需要が強い局面では、短期債利回りに影響する可能性が示されている。

国際通貨基金(IMF)もトークン化に関する報告書で、ステーブルコインを証券で裏付けられた急成長中の準通貨と位置付けた。ステーブルコインはもはや暗号資産市場内の取引手段にとどまらず、米国債需要や短期金融市場に結び付く資金循環の一角として定着しつつある。

キーワード

#ステーブルコイン #米短期国債 #米国債 #世界債務 #国際金融協会 #サンフランシスコ連銀 #ジニアス法 #国際通貨基金
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.