ロシア中央銀行は、銀行や金融会社が発行する残高証明書に、顧客の暗号資産とデジタル金融資産の保有情報を記載する制度改正案を公表した。9月1日に施行された新法に基づき、暗号資産の取引経路や保管、税務申告を一体的に管理する狙いがある。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが9月30日、報じた。改正案では、商業銀行や金融会社が発行する各種証明書の記載項目を見直し、暗号資産関連の保有情報を新たに盛り込む。
対象となるのは、顧客の決済口座や預金口座に関する残高証明書だ。これらの証明書は、他の機関に残高を証明する際に使われるほか、公務員や公的部門従事者の所得・資産申告にも添付される。
記載対象には暗号資産に加え、ロシア法上の「デジタル金融資産」も含まれる。民間ブロックチェーン上で発行されたトークンや、トークン化証券が該当する。
今回の措置は、9月1日に施行された「デジタル通貨およびデジタル権利に関する法律」に基づくものだ。同法は、投資や売買、法定通貨との交換を合法化する一方、国内の決済手段として暗号資産を使うことは禁じた。ロシアにとって初の包括的な暗号資産規制の枠組みとなる。
新制度では暗号資産取引自体は認めるが、投資上限や資産の保管・移転には制約を設ける。企業と個人はいずれも売買できるが、適格投資家以外の個人による購入は、仲介業者1社当たり年間4000ドル(約60万円)未満に制限される。
保有資産は、国が承認したデジタル資産保管機関に預託しなければならない。利用者が自ら管理する非カストディアル型の個人ウォレットには移管できない。
一方、国境をまたぐ送金や海外決済ではデジタル資産の利用を認める。ただし、ロシア国内で適法な取引と認められるには、すべての取引を認可されたプラットフォーム経由で行う必要がある。
監督体制は当局ごとに役割を分担する。ロシア中央銀行は市場参加者の登録・認可、コンプライアンス基準の策定、投資家資格要件の管理を担う。連邦金融モニタリング庁(Rosfinmonitoring)は不審な資金の流れを把握し、連邦税務庁(FNS)は暗号資産投資家の納税状況を確認する。
また、ロシア居住者は、国内の保管機関が管理していないアドレスに関連する取引を別途申告しなければならない。
ロシアにおけるデジタル資産の保有規模は約440億ドルと推計されている。不正流通など違反行為に対する処罰基準は2027年夏までに定める予定だ。今回の銀行報告の義務化は、取引経路、保管方式、税務申告を一体的に管理する追加措置とみられる。
ロシアは暗号資産の利用範囲を限定する一方、デジタルルーブルの普及も並行して進めている。デジタルルーブルは9月上旬に一般利用を開始した。
暗号資産を制度の枠内に取り込みつつ、実際の利用は厳しく制限する方向でルール整備を進めている形だ。今後は、関連する二次規定の策定過程で、銀行の報告範囲、顧客確認の基準、違反時の制裁水準がどこまで具体化されるかが焦点となる。