米上院で暗号資産の市場構造を巡る「Clarity法案」が前進しなかった後も、暗号資産市場は堅調を維持している。Bitwiseはその背景について、米証券取引委員会(SEC)が既存の権限の範囲で規制対応を迅速に進めている点を挙げ、ステーブルコインや取引所、トークン化、収益型トークンの4分野に追い風が及んでいると分析した。
CoinPostが1日付で報じたところによると、Bitwiseの最高投資責任者(CIO)マット・ホーガン氏は9月30日に公表したメモで、「暗号資産は長期的な確実性と引き換えに、より良いルールをより早く手に入れた。悪くない取引だ」と評価した。
米上院は9月15日、Clarity法案の採決入りに必要な終結動議を49対50で否決した。可決に必要な60票に届かず、法案は前進しなかった。
もっとも、その後の市場は底堅く推移した。ホーガン氏によると、ビットコインは8%、イーサリアムは7%上昇したほか、Nearは104%、Uniswapは49%、Avalancheは43%上昇したという。
ホーガン氏は、法案が成立しなかったことで相対的に恩恵を受ける分野として、まずステーブルコインを挙げた。Clarity法案の審議では、ステーブルコイン残高に対する報酬の提供を制限する内容が盛り込まれていたが、法案が成立しなかったことで、Coinbaseなどの取引所が顧客のステーブルコイン保有分に報酬を付与する余地が、現行の枠組みの下で維持されたとみている。
暗号資産取引所も論点の1つだ。法案が成立していれば、全米共通の現物取引所ライセンスの導入や、取引所機能とブローカー機能の分離といった規制整備が進む見通しだった。ホーガン氏は、法案が前進しなかったことで、CoinbaseやKrakenなど既存大手を取り巻く競争環境の変化が先送りされる可能性があると指摘した。
トークン化プラットフォームでは、SECの対応が注目を集めた。SECは9月17日、トークン化された米上場株について、限定的な参加者が自動マーケットメイカー(AMM)と流動性プールを通じて売買できるようにする条件付きの免除措置を打ち出した。一定期間、当該取引の場を「取引所」の定義から除外する内容で、有効期間は5年としている。
ただし、取引可能な銘柄数や取引量には上限が設けられ、投資家に対しては従来の米国株と同等の権利を提供することが求められる。
ホーガン氏は、この措置の受益企業としてSecuritizeを挙げた。Clarity法案が成立していれば、トークン化を巡る一部の規制論点はSECによる追加検討の完了を待つ必要があった可能性があるが、法案が前進しなかったことで、SECが自らの権限を使って先に動いたと評価した。
収益型トークンを巡る不透明感も一部で和らいだとの見方を示した。SECの企業金融局は9月25日、FAQで、すでに稼働しているネットワークのトークンについて、買い戻し計画を公表したという事実だけで投資契約に当たるとは限らないとの考え方を示した。
ホーガン氏はこれについて、Clarity法案が成立した場合にも残り得た曖昧さが取り除かれたと評価した。ただし、SECのFAQは法令のような拘束力を持つルールではない。
同氏は現状について、立法による長期的な規制の確実性は得られなかった一方、既存の行政権限の下で規制環境の整備がより速く進んだ局面だと整理した。半面、行政当局の措置は将来の政権運営次第で見直される可能性がある点をリスクとして挙げた。
2029年に発足する新政権が、より厳格な姿勢を取るSECや商品先物取引委員会(CFTC)の首脳を任命すれば、足元の規制の方向性が変わる可能性があるという。
それでもホーガン氏は、2029年までに世界の主要金融機関がブロックチェーン基盤の事業を数年かけて構築していくことを踏まえれば、規制が大きく巻き戻される可能性は低いとみている。
今回の分析は、議会での立法が遅れても、SECなどの規制当局が既存権限を使って暗号資産やトークン化を巡る環境整備を進め得ることを示唆するものだ。市場では今後、SECとCFTCの追加指針、ステーブルコイン報酬の扱い、トークン化取引に関する後続措置が焦点となりそうだ。